Archive for 12月, 2008

Homebrew BOF

昨日(Dec.29.2008)に行われた “Homebrew BOF” にお誘いをうけたので参加してきた。
“homebrew” という単語に馴染みが無い人のために説明しておくと、自家製造酒を趣味とする人の集まりといった言葉通りの意味ではなくて、主にコンシューマゲーム機などの「再生専用」ハードウェアで動くアマチュア製作の自作ソフトの事を指す。
基本、ゲーム機などは一般ユーザー向けにSDKを提供しておらず、自作ソフトが動作できないように蓋をする傾向にある。なので通常は homebrew を動作させることはできないのだけれども、そこはそれなんとかする方法があったりもするのだな。だからといって誰でもできるわけではないので、ある程度のハックレベルを持つ人達のお楽しみといったところでもある。
これを前向きに捉えると Open Tech Press の「Gadget Hacks:Nintendo DS(Lite)でオープンソース系ソフトウェアを使用する」という記事のようになるのだが、実を知っている人はこの記事を苦笑いしながら読むこととなる。NDSでは homebrew を動作させるために R4 等のブートアダプタが必要になるのだが、多くのユーザーはこれを「不正コピーゲームイメージ」を動作させるために使用している。つまり、正しく使用すればオリジナルソフトウェア開発、悪しく使用すれば不正コピーとなるそんな紙一重の世界。

でまあ、正しい方の利用が楽しくて仕方がないというハッカー気質の人もちゃんと居るわけでして。
そういった、ゲーム機で自作ソフトを開発したり、自作ゲームを開発したりといった人達に声をかけて集まってみたのが今回の “Homebrew BOF”。よするに、同じ趣味を持つ物同士でおしゃべりしましょという会。
ドリキャスで Quake が動いている所とか、Wii の上で動作する Ruby とか色々見せて貰った。
「かいてんパティシエ!」で有名な、あるふぁ〜秘密基地の D.KさんとひたすらGP2Xトークを繰り広げてみたり。
BOFの後の飲み会も合わせて楽しい時間を過ごさせてもらった次第。
GP2Xwizとか色々控えているので、ここらで自作(へぼ)ゲーム製作のモチベーションを上げておきたいと思っていた所に良い刺激を山ほど。

homebrew というのは原則「組み込み機器」開発となる。なので集まった人々も組み込みソフトウェア開発にとても強い人達、もしくはその予備軍となる。組み込み系開発はPCアプリソフト開発のようにいかないとか、組み込み開発に強くなろうとか、そんなエンジニア雑誌上での啓蒙どこいく風といった雰囲気がBOF会場にはあった。
まあ、やっぱりというかなんというか、多くの人は組み込み系開発やあっち系の玄人さんだったりするのですが、そのへんはさわやかにスルー。

ここしばらくニコニコ動画にかまけていてソフト開発から離れていたこともあって、私なんぞは居場所がないんでないかと思っていた。んがそんな予想に反して「ブログ見てます」「動画見てます」「あ、不在通知Pでしたか」「ソース参考にさせてもらいました」と多くの言葉を頂いた。あれま。
そんなんだったら恥ずかしい自己紹介なんか全部すっ飛ばして、開発話だけすればよかった。



エロゲーと音楽

最近は古いCDを部屋の奥から掘り出してちびちびとリッピングし直す作業をしている。
うちにあるCDのほとんどがゲームミュージックかアニメ関連なのはまあさておき、古い奴は1988年のものとかになるのだけれどもこのあたりのCDがそろっと読みづらくなってくる頃合いなのですな−。おまけにこれくらい古いCDだとほとんどリッピングもしていなかったりする。昔はCPUパワーもHDDもリソースとして小さかったのでなんでもかんでもリッピングというわけにはいかなかったというのが理由の一点、よく聴くのはリッピングしていたのだけれども当時良く使っていたMP3 128kbps は今聴くと圧縮による劣化が我慢ならなくなってきているというのが二点目。
個人的にATRACの256kbpsが音質的に満足できるポイントなのだけれども、可搬性を考えて今回は AAC 192kbps にしているあたり。

そうして古いCDを部屋を漁っていると懐かしくも思い入れの深いCDが出てきた。
cosmic_psycho.jpg
その一枚「コスミックサイコ」。もう知らない人はさっぱりわからないと思うので解説しておくと、これは市販品ではなくて同名のエロゲ−に特典として封入されていたサウンドトラックCD。私はX68k版を買った、現在はゲームそのものは破棄しているのだけれどもこのCDだけはお気に入りで大切に手元に置いている。
発売年は1991年で、ブランドはカクテルソフト。ジャケットではわかりづらいかもしれないけれどもキャラクターデザインは林家ぱー、現在のペンネームは林家志弦。当時CALやJOKERといった作品で話題になったあとバーディソフトをやめて後の作品だったと思う。ちょいと少女漫画チックな絵柄で人気を博したものの書く漫画は豪快でとか語るまでもなかろう。
なんでこれが思い入れの一品なのかというと、それまでは下劣でゲームとして劣っていたエロゲーというジャンルが通常のゲーム並みにクオリティを上げてきたのがこの頃なのですな。特に添え物として適当なものだったシナリオと音楽がまともに見れるようになってきた、そんなターニングポイントな作品が次々と出てきた頃。で、「コスミックサイコ」はCDがついてくるくらいなので音楽に対する力の入り方が結構凄かったのです。このあと音楽で魅せるタイトルというと「雫」まで間だが空いてしまうのだけれども。
ゲームの方も当時としては気合いが入っていて、ストーリーが面白かった。確か、現代の青年がなんかの弾みで異世界の宇宙船に飛ばされてしまうとかいう設定。で、その宇宙船というか種族は基本女の子ばっかりで戦争をしている状態(あのころガルフォースが流行っててなあ)で、女の子と仲良くしながら戦っていくとかそんな感じだったような。物語としてちゃんとしている事自体当時は珍しかったのです。正直エッチシーンはどうでもよかったような覚えがある、ちなみにグラフィックはRGB8色で描かれていた時代。
まあCDを今聞き返してみると音源の都合でしょぼいのはあるけれども、それでも結構聞けたりする。

つーてもあくまでエロゲーにおいてという注釈がつくのだけれどもね。
通常のゲームにおいてはちゃんとそれ以前に素晴らしい作品がいくつも出ている。
アドベンチャーゲームにおいて、素晴らしい音楽が場面を盛り上げるといった手法を確立した金字塔はやっぱこれでしょ。
jesus1.jpg
エニックスの「ジーザス」。このジャケットはファミコン版のサントラで1989年のもの、PC版はもう1〜2年前に出ていて私はX1版で遊んだ。
作曲はすぎやまこういち氏。それまでのアドベンチャーゲームではただ鳴っている感のあった音楽に対し、場面を盛り上げるための演出という意味を持たせたタイトル。素晴らしい音楽は場面を盛り上げ、ゲームを映画と同等の娯楽に仕立て上げるものなのだということをこれで初めて知った。
しかも、音楽をシナリオの小道具として用いていて、それが故にクライマックスで流れる「勝利の旋律」はいやがおうにも盛り上がる。まあ古典なのでネタバレするけど、船内に潜り込んでクルーを襲っていたエイリアンは特定の旋律に弱く最後エイリアンの前でその旋律を演奏することで撃退するんですな。その旋律はメインテーマのイントロなんだけれども、それが鳴り始めてから音が重なっていって最後「勝利の旋律」という楽曲になっていくのだからそりゃ盛り上がりますよ。

おまけとして珍しいCDの紹介。
synergy1992.jpg
“SYNERGY RECORD” の1992年アルバム。これはなにかというと、最初期の「オリジナル系同人CD」なのですな。うらべすうの絵がなんだか懐かしい感じ。
1991年の “MCMXCI” を知り合いに聞かされて、同人CDというのは面白いなあと翌年自分で買った物。同人といっても参加メンバーがほとんどゲーム製作のコンポーザーなので、当時でもアマチュアとは一線を画したレベルの楽曲が入っている。めがてん細江氏や古代祐三氏が参加しているということで話題になっていたけれども、それ以外の面々も今聴くと「えー、あのひとが?」といった顔ぶれ。残念ながら添付の冊子を紛失してしまったので、どの曲が誰の作品かはわかんなくなっているけれども。
このあともうちょっとすると本当に同人でもCDをプレスすることができるようになったり、CD-Rが個人で購入できるようになったりして「同人音楽」というジャンルは広がっていったのです。
それまでカセットテープ配布だった不気味社の「豪快な歌声」がCDシングルに移行したのもこの直後あたりだったはず。

というわけで、単なる昔話でした。
ジュークボックスにジャケット絵を付けるために、手持ちの物をスキャンしたついでの記事。


By rerofumi in ゲーム,音楽   .::. Read Comment (1)

ポケパワーのリコール

割とあちこちのニュースサイトで目にする事ができたパナソニックのモバイル電源「ポケパワー」のリコール案内。
「USBモバイル電源「ポケパワー」事故防止のためのリコール社告実施について」
おもいっきり持っているわ、コレ。

dsc00156.jpg
せっかくなんで記念撮影。

で、さっそくWEBのリコール対応フォームにて連絡。
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右が届いた代替品。
宅配の箱の中に着払い送付状が入っているので、ここにリコール品を詰め直して送ることで対応完了となる。

これは何をするものかというと、セットするニッケル水素充電池2本からモバイル機器を充電するアイテム。
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USB充電ケーブルがあれば色々充電できる。
基本外出先で携帯電話を充電するためのもの。鞄の中に入れておけばイザというときに充電できるし、汎用のニッケル水素充電池なので繰り返しの利用も容易というわけですな。
代替品のBQ-PP10はリコール品のBQ-600よりも大きくなっちゃったけれども、USB充電ができるようになったから単体だけでの利便性も結構上がっているので差し引きゼロといったところですかな。

こういったリコールのアナウンスも、家電Watchなどを始めいろんなWEBニュースサイトで目にするようになった。
リコール情報は通常消費者に届きにくいものだったのだけれども、今はWEBのおかげで大分伝わりやすくなったのではないだろうか。情報社会ですな。


By rerofumi in 周辺機器,情報   .::. Read Comments (2)

fuwa2factory.net は閉鎖しました

以前運営していたギャルコンテンツレビューサイト(というか私のアニメ感想日記)の「ふあふあファクトリー」を2008年12月21日を持って完全閉鎖した。
基本、自分語りはこのBlogにお引っ越ししたため、2007年8月で更新を止めており、過去記事が見れる程度の状態で残っていた次第。ではなぜ、12月21日なのかというと、サイトのドメインが切れる日なのですな。なのでこれを期に完全にアクセスできなくしようということで作業したというわけ。DNSの余韻で即座に繋がらなくなるというわけではないでしょうが、現在は意図的に404でアクセスできない状態にしてある。

WEB上の情報は分散データベースであり将来誰かが必要とするかもしれないというのが理念であり、できるだけそれを残しておこうという方針ではあるのだけれども今回は完全に破棄することにした。
一番の理由はドメインがなくなる事なのだけれども、システムとして使っていたXOOPSのバージョンが古かったりしてセキュリティ的にほったらかしておくわけにもいかないとので消しちゃうことに。
下手にXOOPSというCMSシステムを使っていたので、データの移動、再利用が困難だというのが正直な所。この辺はサイト運営の課題でもありますなー。まあ、DBには残っているので引っ張り出してコンバートすればなんとかなるかもしれないけれども、ちとめんどくさい。

「ふあふあファクトリー」はアニメやゲームのレビューを書くための私個人の感想サイトとして設置していたもの。
過去の日記をみると、2002年12月26日にリリースしていますな。それから4年半の間へたれ感想文をだらだらと書いていた次第。
レビューでない日記部分はこのBlogにデータ移動してあるので、今回消えたのはメインのレビュー記事という
ことになりますな。まあ、この辺は見返してもしょうがないものがあったりもするので、恥ずかしいからなかったことにしようという目論見も含まれていたり。
「ふあふあファクトリー」を始めた意図はいくつかあって、一つは毎日更新できるネタということでアニメ視聴レビューというのはコンテンツになるんでないかといったもの。もう一つはそのレビューにツッコミを頂いたり、たのレビューサイトとリンク張ることでひとつのコミュニティが形成できるのではないかといった展望の実践と観察。そして最後が、その頃はやりだしていたCMSというサイト構築システムを実際に使ってサイトを作ってみるということの実験。
XOOPSを知らない人の為に簡単に解説すると、スラッシュドットの様なコメントを付けられるニュースとユーザーアカウントシステムを持ったサイトを簡単に作れるCMS。ZopeやPloneの様なサイト構築のベースとなるシステムじゃなくて、本当にアプリケーションレベルまで面倒見てくれるが、その分カスタマイズの自由度は低い感じ。
使ってみて思ったのは、日本ではアカウントログイン型のサイトはよっぽどの事がないとうけないということ。特に個人運営のサイトでアカウントを取得しようという人などほとんどいないだろう。まあ、そのへん、うけられるサービス次第ではあるだろうけど、個人のレビュー記事やブログ程度のものではいまいちということか。
同じ様な理屈でログインが必要な形のフォーラム(海外で主流のツリー型BBS)もさっぱりですな。

個人的には色々勉強させてもらったと思う。
Blogをこちらに移動してからレビュー記事は意図的に減らしていたんだけれども、ここしばらく読んでいるラノベの読書記録のため、はてなダイアリーに分室を作ってみた。
「rerofumiのラノベ読書感想文」@はてな

新作ばかりというわけでもなく、適当に読んだ端から載せているだけなのでほとんどアットランダムで不定期掲載なのはご容赦。
まあ、見るまでもなくというか本当に笑ってしまうくらいジャンルが偏っているので、お好きな人だけどうぞ。しかし書影がみんな同じに見えるわ。ラノベで人気のジャンルである「異能力バトル物」が個人的に凄い苦手なのでその辺は避けているし。



「萌SD」にたりない物

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萌えキャラを付けて売ろうという試みの microSD カード「萌SD(もえすでぃ)」
なんとなく予約して発売日に入手していたりする。この手のは結構枚数あっても使ったりするのでなんとなく揃えてみた。1GBが2枚あるのは気にするな。や、安かったからってだけなんだからね!他の2人が可愛くないとかそんなことは言ってないんだからね!
実際のところ、割と所有ガジェットでSDHC未対応のものも数あったりするので 1GB、2GB という通常SDは使い道があるのだ。それに、SDHCじゃない通常SDだとFAT16でMMC互換SPIアクセスができるから、マイコンで扱い易く電子工作派にとっても使い出があるのですよ。言い訳じゃないよ?

でまあ、買う前からわかりきっていることだけれども『萌え』を名乗るにはあまりにも残念すぎる商品である。
何が残念なのかは考察に値すると思うので一筆記しておく次第。
『はてな村』風に書くと「そろそろ『萌SD』について語っておくか」、である。
取り敢えず語り口として「かわいくない」「萌えない」「絵が好みでない」という嗜好によるものは置いておく。いやしかし、2GBの次女はメモリの中に入っている壁紙をみて初めて「パンチラ」している絵だというのがわかるんだけれどもちっともうれしk(ry

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これが内容物。昨今の激安 microSD に比べるとそんなに安くもないのだけれども、そのかわりSDアダプターがついてくる。割と実用的なセットだったりする。
普通のSDと違うのはアスタリスク型の模様がついていてちょっぴり華やかさをアピールしている程度。microSD の方は何かしようもないのでこれで良いけど、アダプタの方は絵を刷り込むなり色つきの樹脂で成形するなりできたんではないか。このアダプタが、パッケージのベースカラーと同じ色になっているだけでかなり存在意義がでたと思うんだけれどもな。
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もっとも残念なのが取扱説明書。通常のSDカードと同じ文面とレイアウトの紙一枚で型番以外『萌SD』として書かれている事が無い。
なぜここにイラストを添えないのか。せっかくキャラクターが居るんだからそれに可愛く解説させるとか、そうでなくても脇に挿絵として置いておくとかできるだろうに。

こうして内容物を眺め実際に製品を使ってみると、この製品が『萌え』と称している要素は「パッケージ」と「メモリー内におまけで入っている壁紙」の2点だけなのですな。SDカードとしての実用度や、説明書やサポートといった点にはまったく触れてこない。
つまり店頭で「何かSDカードを買おう」と目的薄く売り場をブラウズしたときに、ちょっと毛色の違うこの製品を目にとまらせ、「せっかくだからこれにするか」という比較購入時のアピールでしかないわけなのだ。買った後のSDメモリにキャラクターは投影されていない。
そうして考えると公式サイトでの設定もかなりよろしくない。この3人娘はおじさんの家でSDメモリを売っている売り子ということになっている。この子らはあくまで売り子で「買ってくださいね」と微笑むだけで、買ってしまった後の商品はキャラクターから離れた物になってしまう。可哀想なのはマッチ売りの少女なのであって、その少女から買ったマッチそのものには深い思い入れがあるわけではないのだ。
つまりだ、キャラクターを付けるのならなんらかの形でSDカードを擬人化して、SDカードの先にキャラクターが透けて見えるようにしなければならないのだ。さすれば、SDカードに愛着も湧くし、複数枚所有しようかという流れにも持ち込む事ができる。
現状では「壁紙が欲しいから」程度にしかこの商品を選択する理由が無く、その壁紙も1枚あれば十分なので同じ商品を2枚3枚と買わせる原動力にはなりえない。むしろ壁紙は広告がわりにWEBで配布した方がよかったのではないかな。

米だの苺だのが話題だけれども、あれらは名前とキャラクターが結びついているしある程度の擬人化となっているので、食しながらうっすらとキャラクターを透かして見る事ができている。
そのへんを踏まえることのできない、形だけの追いかけ商品が今後どれだけ登場するだろうか。ある意味楽しみではある。

キャラクターは絵があるだけで価値をもつものではなく、その振る舞いや事象への紐付けによって魂を得るものである。



流通のスケールとミニマルの存在価値

小寺信良の現象試考:「一億総クリエイター」という勘違いに至る道のり
上記リンクはITmediaの記事。この記事から派生して色々な議論が繰り広げられているように見受けられる。
個人的には、書いてあることは順当なれど「なんか気持ち悪い」と感じた。その気持ち悪さはどこからくるのかとかどうもうまく説明できそうに無いので色々考えていたあたり。
おそらく私がひっかかっているのは「一億総CGM時代なんて幻想ですよ」ということの説明に使われている『いかにそれをビジネスとして回していけるか』のあたりなんだと思う。
コミュニティスペースが利益を追求しないと経営がたち行かなくなるというあたりは良いのだが、論点がずるりと「広場で楽しんでいる民間クリエイターも儲けないといけませんよ」と無理矢理シフトしているあたりがどうにも解せない。

UGCを商業システムにのせるにはクオリティが足りない、とか。流通にのせビジネスとして利益を追求するべきだ、とか。そういった危機感を持っているということが、既存のマス流通メディアの枠組みに浸かりきっていて、そこにしか価値を見いだせていないという事なんではないかと考える。

こういうときにたとえ話は悪手なのだけれども、うまい表現を思いつかなかったのでカレーにたとえてみる。
知り合いがカレーを手作りしてごちそうしてくれたとしよう。そしてそのカレーが美味しかったので感動したあなたはどういったアクションを取るべきなのだろうか。「ぜひ代金を払わせてくれ」と迫るのか、「全国に配給して利益を得るべきだと」提案するのか。
そもそもでその家庭用なべで煮たカレーは利益が欲しくて作られた物なのだろうか。

あなたのカレーは美味しいので町内会のバザーで大勢の人にふるまってやって欲しい。とちょっとだけスケールが広がる展開を見せた場合。バザーに集まる人数にもよるけれども、家庭用なべよりも大きななべを用意し十分な量を作る事になるだろう。それらの手間を考えると、この次点で申し出を辞退する人がいるかもしれない。
町内会のバザー規模であるとカレー代も馬鹿にならないので経費分を徴収するか、スポンサーが経費を負担してくれる事になるだろう。このとき「がっぽがっぽ儲けるぜ」という金額設定をするべきであろうか。

毎回バザーでカレーが好評なうえ、自分もカレー作りに意欲を燃やしているのであれば店舗を構えて町の小さなカレー屋さんを営む事になるかもしれない。ここで始めてカレー作りが利益追求の形を取り始めるが、バザーから店舗へ展開する距離はかなり離れている気もする。
町のカレー屋さんに食べに来る人数は百万人とか一億食といった規模にはならないだろう。そんなお店に「全国展開しないとビジネス規模が広がりません」と提案するのが次のスケールへの引導となる。

マスを対象にしビジネスとして成り立つカレーというのは、大人数によって工場で量産されるカレーということになる。全国に流通して均一的な味を格安で提供でき、なおかつ保存も利く、そんなレトルトカレーが最上位に位置することになる。もしくはチェーン店のカレー。
あなたはレトルトカレーと家庭のカレーを同一視してビジネス規模で優劣を判断していますか。
おそらく多くの人は「べつのもの」として、状況に応じた対応と評価をしていると思う。
誰が食べても同じ味と、私のために作ってくれた味は価値基準が異なるはずなのだ。

つまり、プロかアマかといった二極ではなく間に沢山のスケールクラスがあるはずなのですよ。
そしてそれらスケール毎に得られる報酬の形ってのがあって、精神的充足から貨幣まで色々なものから自分が最も欲しいものがあるところにとどまるものなのではないかと。
そしてそれらはどっちか片方しか生き残れないものではなくて、両方存在していくべきなもの。

ここまで書いてやっぱりもやもやしたままおわる。


By rerofumi in フリートーク   .::. Read Comments (2)


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