Archive for 12月, 2011

gdgd妖精s にみるコンテンツの情報フィードバック

アニメ放送開始まで全くのノーマークだった「gdgd妖精s」。
もうメチャクチャ大好きで、今期はこれ以外のアニメ視聴がほとんど停滞してしまったくらいにリピートして見返している。
放送直後から『大穴』の声が上がり、ニコニコチャンネルではホストが『大穴』タグをロックすることで大盛り上がり。今期覇権アニメと冗談で持ち上げていたら「ニコ生PLANETSスペシャル 惑星開発大賞2011 アニメ部門」で堂々の1位を受賞。一押しではないけれども、みんなが準押ししていたので1位になってしまったという微妙さがまたたまらない。
地上波放送は TokyoMX 1局、しかも深夜3時の15分番組という本当に端っこのスポット番組が注目されているのはなぜだろうか。
地上波の他はニコニコチャンネルでの配信であったが、このニコニコチャンネルと非常に相性が良かったからではないだろうか。

放送前は本当に注目度が低かった。私も一応タイトルは見かけていたけれども、15分のCGアニメで見た目も安価なCGということもありノーチェックといった具合。
最初に見始めたのは声優ファンの層らしい。TokyoMXでは「明けテレ」という明坂聡美をパーソナリティとした番組をやっており、そこの宣伝から流れてきた者、ニコニコで新番組をクロールしていてキャストの三森すずこ、明坂聡美、水原薫という名前に釣られて来た者、そういった層がまず見始めた。
で、見た者の感想は総じて「あれ?これなんだか面白いぞ?」といったものだったようだ。
見た目しょぼいCGなのに面白い。そのしょぼいCGが逆にMMD臭くて「これMMDじゃね?」という疑問が上がるのは当然のことだった。そういった疑問に対し、CG監督の菅原そうた氏が Twitter で「MMDも使っていますよ」と発言し、MMD界を中心にニコニコ動画界隈で話題となった。
私はこのタイミングで興味を持ち、2話の放送を録画予約したくち。
まあ、実際には沢山あるツールの中でモーション補佐的にMMDを使ったこともあるという感じで、実際にMMDで映像レンダリングまで行われたわけでは無い。どうも、アニメーション製作自体は XSI で行われていたっぽい。
その後、妖精達のモデルがMMD化され Windows100% に収録されたが、これはキオ氏の手によってほぼ丸ごとリファインされたものになっている。(関連記事)
なので、本編にあまりMMDは関係ないのだが、話題をかっさらうには十分なネタとタイミングであった、
興味を持って一度見てしまえば後はただ笑い転げて夢中になるのみである。

この番組、絵に描いたような低予算番組だったため当初はDVDの発売予定もあるかないかだったようだ。
そんな規模でかつ短時間で制作を回しているので、状況に応じた変化というのを出せている。
例えば、人気が出たことでOP/EDの楽曲がダウンロード配信されることになったのだが、このフルサイズOPがどう見ても後付けで無理矢理作っている。歌詞の2番と3番の曲間で『番組の宣伝もしちゃおうよ』とトークが入っているのだが、そこで『妖精が三人森の中で房子と……』と語られている。この持田房子(42)というキャラクターは3話のアフレ湖で人気を博した(?)キャラクターである。このことから、OPフル盤は少なくとも3話収録後に付け足されたものだということが読み取れる。
小規模であること、短期間であること、視聴者に異様に近い事から実際の反響を見て盛り込まれたであろうネタが結構多い。
毎回変わるEDネタもそこから来るものだろう。仕込んでおいたらみんなが気がついて笑ってくれた、ならもっと加速してやれといった雰囲気で作られている。

8話の「gdgd生放送」回では、ニコニコ動画の中でニコニコ生放送っぽいネタをやるというメタなギャグを展開しているが、このときの画面を構成しているのはニコニコチャンネルから拾ったネタであり、タグの部分に書かれている単語は全てニコニコチャンネルに実際に付いていた単語である。つまりニコニコでの視聴者が、番組内に出てきた画像を作り上げたとも言える。
この回で番組内名コメントとして取り上げられている『アルセーヌみたいな声しやがってwww』という声優ネタは、実際にニコニコ1話で流れたコメントだという説がある。実際に1話が公開されてから3日分のコメントを見てみたが残念ながらそのものは無かった(「アルセーヌ様…」というのはいくつもあった)。もしそのものがあったとしたら、ニコニコでの視聴者アクションをフィードバックして番組作成をしているということであり非常に興味深い事例となるのだが。

この様に、視聴者の反応を取り入れて短時間で反映させていくことにより一層面白くなっていくのが「gdgd妖精s」の楽しさなのではないだろうか。
アニメという枠組みではこれができる作品はそうそう無いだろう。
「けいおん!」でムギの眉毛をたくあんに見立てるというネタがフィードバックされていたが、最終話の時点だった。あれもぎりぎりの時間だったのではないだろうか。←原作1巻カバー裏マンガがネタらしい、カバー裏見ていなかったので気がついていなかった。ご指摘感謝
ユーザー側としては、こういったユーザーアクションが反映されたネタがあるととても嬉しいものである。
反面、コンテンツがハイコンテクストになってしまう問題はあるのだが、そこはバランス次第。

こういった、ユーザーのアクションやネタが番組に反映されるのが嬉しいという感覚は何に似ているんだろうと考えていた。
やはりこれは「アニメ声優ラジオ」の文脈なんだろうな。
自分のネタに対して声優が(精錬された)リアクションを取ってくれるのが楽しい声優ラジオ。それを作っている石館光太郎氏ならではな機微なのかもしれない。それを菅原そうた氏が映像的に面白く膨らませることで「gdgd妖精s」は作られているのだろう。

視聴者、制作者、配給者。その三者で距離が近く互いに情報をくるくるとやりとりできるようなコミューン形成がコンテンツを楽しくする経験の創造となっている。
一方向だったり押しつけだったりする情報の売り方は、もう過去のモノになっているのだ。




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