「醤油鯛は絶滅危惧種なのではないか」という記事を以前に読んで気になっていた。
分類する熱心なコレクターもいるほどの定番品なれど、確かにここ最近はめっきりと見なくなった。スーパーで売っているところも見かけなくなり、上のタレビンはこれしか手に入らなかった的敗北の結果である。
原因はあまり考えるほどのものではなく、お弁当についてくる醤油が軒並みパック品に取って代わられたからでしょうな。確かに便利だもんね、小袋調味料。使わなかったら取っておいて後日のごはんに使えるし。
でも、お弁当を電子レンジで温めたときに腹が破けてあらぬおかずを醤油まみれにしてしまう、あの醤油鯛も味わいがあって良かったような気もする。
最近は勤務地の都合で「オフィス弁当」がお昼ご飯となっている。オフィス弁当といっても、容器回収型の仕出し弁当屋なわけだけれども。
そういったお弁当には小袋調味料が強い味方となってくる。醤油やソースにドレッシング、割り箸と一緒に取り放題な生タイプのお味噌汁。もはや脇役と言うよりも、小袋調味料大活躍の主戦場といっても良いくらい。
私はなんでかこういった小袋調味料を手に取ると製造会社をチェックしてしまうクセがある。頻繁にチェックしていると、小袋調味料の世界で活躍するメジャー会社というのが見えてくる。例えば、七味唐辛子ならテーオースパイスだとか、マヨネーズはケンコーだとか。
そのような小袋調味料の世界は、スーパーの店先で見かける会社とはまったく異なる世界にあるところがますます興味深い。
そういった小袋調味料の世界に興味を持ったきっかけはコンビニの小分けそばだったと思う。
いまでこそコンビニ弁当の定番商品だけれども、なんにでも始まりはあるもので20年ほど昔には存在していなかった。それ以前にも「ざるそば弁当」といったものはあったものの、のびきったそばがもちゃっと盛ってあるだけの代物で、箸を入れると塊になって持ち上げられたとかそんな感じ。当然おいしくなかったのだけれども、当時のコンビニ弁当では冷やし麺全体がおいしくない駄メニューだったような覚えがある。
そんななか、セブンイレブンが「小分けそば」を発売したのだが、これがセンセーショナルでヒット商品となった。そこには2つの工夫が込められている。
ひとつは、麺を9つの小玉にわけたこと。まあ、のびてくっつくのはしょうがないとして、それを箸で分けやすく小分けにしたのだ。これで実に食べやすくなった。玉がひとかたまりなのはしょうがないけれども、つゆにつけてしまえばほぐれるわけで。そのつゆまで持って行ける適度なサイズというのがよかったわけだ。
もうひとつは、つゆにこだわったこと。それまでの麺弁当ではつゆは適当なもので、どちらかというとあまりおいしくないものであった。コンビニ弁当自体が安かろうまずかろうで停滞していた時代。そんなとき、セブンイレブンの小分けそばは「だし」と「かえし」の2袋に分けたこだわりつゆを提供してきた。そばがのびておいしくないのはしょうがないのでつゆでカバーしようという作戦である。このつゆが当時の他のメニューを引き離すくらいいけていた。
で、そのつゆを製造しているのは誰だ?と注目したわけですな。このつゆを企画製造していたのは「味の素」だった。さすがは味の素である、大会社ならではの企画力と戦略だといたく感心した次第。
小分けそばはこのあと「麺ほぐしだし」がついたりとどんどん進化するのだけれども、最近は微妙にパワーダウン気味ですな。
その後、コンビニの麺弁当で注目したのは正田醤油。
確か2000年前後だったと思うけれども、そのころセブンイレブンの麺弁当のつゆを一気に引き受けていたのが正田醤油だった。小分けそばから始まってありとあらゆるうどんそばのつゆが正田醤油だった時期がある。担々麺のスープとか、小瓶のボトル醤油までセブンイレブンが正田醤油一色で、正田醤油は化け物かと恐れおののいていた。調べてみると確かに老舗の大手なんだけれども、食卓用の醤油はあまり手がけておらず業務用とか小袋調味料に力を入れている様な雰囲気。
スーパーでタレビン入りお弁当醤油を見つけたけれども、これがまさに正田醤油の製品であった。
そんな正田醤油の活躍も長くは続かず、セブンイレブンのつゆは別の業者が入り込み徐々に数が減り世代が交代していった。といっても、一社制覇というのはその後達せられていないみたいだけれども。
今、小袋調味料で注目しているのは「東洋スープ株式会社」だったりする。
先のオフィス弁当でしょちゅう登場するので注目株といったところ。会社名から生タイプ味噌汁中心かと思ったら醤油やソースのパックまで手がけている。
最も、オフィス弁当界隈での小袋調味料では「アミュード株式会社」の方が大手らしいんだけれども、なんとなく東洋スープの方が好みなのである。
そんなふうに日本のお弁当をこっそり支えている小袋調味料。そこにはスーパーの店頭とはまた違った世界で活躍するメーカーたちの世界なのである。
がんばれ小袋調味料。