不在通知Pの目からみたあれこれ
すっかり一大ムーブメントと化した「初音ミク」。MEIKOのユーザーとして優待販売に申し込んだものの、ちと住所の記載を間違った関係で発売日当日に入手できないというアクシデントが起きる。「しまった祭りに乗り損ねた」と思ったのだけれども結局そのあとの広がりが大きくてファーストユーザー組に入ってしまっているのでした。
なんとか祭りに参加しようあせった所で「初音ミクが来ない?来た?」騒動(の萌芽)に飛び込んで楽しんでいる内に「不在通知P」とかいうプロデューサー名で認識されてしまった次第。
ちなみにプロデューサーというのは、ゲーム「アイドルマスター」由来ね。
普段あまりニコニコ動画に投稿した動画の事については語っていなかったりする。これは、ネタの解説をしても冷めるだけだろうから。
けれども、今回はちょっとだけ「不在通知Pとしての視点」から、周辺について書いて見たいと思う。
■初音ミク以前
初音ミクの前はMEIKO(とKAITO)という日本語Vocaloidがあって、一部がそれで楽しんでいた。それがニコニコ動画における人気の下地を作っていたし、MEIKO使いがその技を用いて高度な演奏を初音ミクに歌わせた事が初期の勢いを作っている。
それ以外ではアイマスの存在があったことについては、以前私も語っているし他でも同じ評を見かけるくらい当たり前の論である。
だがここで、もう1つヴァーチャルアイドルを語る上で重要なワードを書き残しておきたい。「僧侶」である。
「僧侶」というのはVSTiフォルマントシンセサイザーの「ディレイ・ラマ」のことである。ディレイラマは一種のボイスシンセサイザーだが「い〜あ〜お」の3種類の母音しか発声できない。その限定された母音で「お〜あ〜お〜あ〜い〜」とかお経みたく歌わせるのだが、個性的な絵面と中途半端な発声で笑いをさそいニコニコ動画でも定番となっていた。
問題は歌自体ではなく、キャラクターが創られていたことにある。
最も古くて最初に人気が出た動画「僧侶のアクエリオン」において、ディレイラマを3つ起動してそれぞれにボイスパートを割り当てていた。この3パートそれぞれ役割が違うことから、コメント達が「ヒ・ダリ」「メ・イン」「ハモ・リー」という名前を付けて親しまれることになる。
中でも「ヒ・ダリ」の活躍が少なく、おいしいところで仕事をすることから「これで給料同じなんだぜ」とか言って大人気に。そもそもで、便宜上付けた名前がだんだんとキャラクターとしての性格をも含むようになっていた。
バーチャルアイドル誕生である。
その後の動画も僧侶3人がニコニコにおける基本フォーマットとなり、「ヒ・ダリ」に笑いの要素を持たせるのがお約束であった。
楽器であっても絵と個性があればキャラクターとして存在できるといったオタク文化とニコニコ動画の空気は、この後初音ミクをヴァーチャルアイドルとして育てるのに重要な要素であったのではないだろうか。
■初音ミクが来ない?来た?騒動
初音ミクが来ない?来た?騒動は立役者であるワンカップP氏の一連の動画の事であるが、彼1人ではあそこまで引っ張れなかったのではないかと思っている。
一番最初の「初音ミクが届かないのでスネています」は確かに私も見て笑っていたけれども、それだけであった。それに応答する形で投稿された前日予約Pの「初音ミクが届いたのでスネていません」、これが凄かった。相手の動画に返信する形での連作という形にびっくりした。そして、視聴者が付けた「交換日記」というタグに激しく嫉妬した。動画間のリレーションをこんな形で実現したのだから。
そして「初音ミクが明日届くのでワクワクしています」という動画を作成して、このリレーションの中に飛び込んでいったのだ。まあ、もうちょっと多くの人が参加するだろうという思惑は外れてしまったけれども。
まとめ動画の最初の方で確実にワンカップPであろうと思われるコメントがあったのだが、ワンカップPもスペランカーのBGMを使う予定であったらしい。それを私に取られて非常に悔しい思いをしたのが、F1レースの時の「やりたかったネタも〜」のくだりとなる。ここで、始めてやりとりが双方向になりコミュニケーションがスタートすることになる。
ワンカップPがあそこで悔しさから歌を作らなかったら、以降は存在しなかったのではないかなあと考える次第。まあ、前日予約Pの火付けが見事だったからなんらかの反応はあったのかもしれないけれども。
ところで、前日予約Pと呼ばれている最初に返歌を作った奇才は、「ねぎミク」こと Ievan Polkka のはちゅねミクを描いたたまご氏と同一人物だと思うんだけれどもあまり話題になってないね。
[後日追記]前日予約Pは確かにたまごさんのアカウントでしたが、作者はOtomaniaさんだったそうです
ワンカップP氏はあれだけの人気を集めてしまったので、以降の作品作りが大変じゃないかなあと思っていたが順当に新作をリリースしており驚く限りである。やっぱり凄い人なり。
最近は歌そのものより、背景の写真の方でボケネタを仕込むというスタイルで確立しつつあるようだ。
■音声合成界隈
やっぱり語るに外せないのは「くまうた」の白熊カオスとそのプロデューサーであるサブ北島であろうか。
白熊カオスがちびちびと歌を作り投稿していたことは寡聞にも知らなかったので、出会ったのは「初音ミク」タグが付いてからである。他にも投稿者は居るのだけれども、その中で一番の人気者が白熊カオスというわけである。他の投稿者の作品もなかなか面白いので探してみると良いかと。
特に、初音ミク以降は新しいくまも参戦してきてちょっとした盛況となっている。特に、組曲『ニコニコ動画』をくまうたに歌わせているのなんかは、かなり無理があってつっこみを入れつつ最後まで見てしまう。もちろん歌詞だけで、曲は演歌なわけだよこれが。
他の音声合成だと、おしゃべりノートに無茶振りの人とか、テキスト読み上げ系の人達もいる。
ただ、こういったテキスト読み上げ系はイントネーションがおかしかったり機械音声だったりすることで笑わせてくれているので、初音ミクと比べるとネタの範囲が狭いのが難しいところ。なにか、あっと驚くネタで笑わせてくれることを期待している。
■その他
時計を改造してねぎミクを表現しようとしていた「初音ミク(はちゅねミク)のねぎ回しを実際に作ってみた」という動画があった。初音ミク祭りの中で1人PCから離れて工作という形で初音ミクを楽しもうとする姿にピコーンと来るものがあって、反応動画を作成した。「歌ってみた」「描いてみた」「3Dで作ってみた」といったそれまでとは違う流れだったのだよ。
まあ、それはともかく、「初音ミク(はちゅねミク)のねぎ回しを実際に作ってみた」の方で「メトロノームで作れば良いんじゃね?」というコメントが投稿されており、メトロノームが市場に貼られているのだが、そのメトロノームが 1つ売れていることには気がついているだろうか。
おそらくこの購入者が「初音ミクのメトロノーム」「初音ミクのメトロノーム その2」の作者じゃないかと見ているんだけれども、だとしたらネタとしてもうちょっと評価されても良いと思う。