キャラクターイラスト絵師のような声

ダウンロード音楽販売のサイトをうろうろしていたら「電車で電車でGO!GO!GO!れぼりゅ~しょん」なるアルバムが売られているのを見つけた。
寡聞にも知らなかったのだが、2008年秋頃に「電車で電車でGO!GO!GO!」の萌えポップカバーとして発売されたアルバムらしい。UFO子(うほこ)の「スペースインベーダーエクストリーム2」が2009年なのであのころのタイトーはそういった路線だったのだろう。
「電車で電車でGO!GO!GO!れぼりゅ~しょん」聞いてみるとなんだか癖になって気に入ってしまった。いかにもな萌え声なので受け付けない人も多そうだけれども、エクストリーム2の InvaderGIRL! と同じくよくできた楽曲にリズミカルサンプルなキュートボイスが心地よい感じ。

んでまあ、個人的にこの電Goれぼりゅ~しょん、InvaderGIRL! とセットで見てしまうんだけれども、どっちもひじょーにクセのあるキュートボイスが耳について離れないあたりに色々と感心しつつ聞いてしまう。
なんというか、いかにもな「可愛い萌えボイス」といった風情なんだけれども、それがサンプルとして連打されていると特徴点が際立って見えてくるとかそんな感じ。
とにかく『ごぉー↑』だの『えくすとりぃむぅ~↑』だの語尾がどこまでも上がりまくる。ほとんど通常の発音ではないくらい。でもその特殊な語尾の上がりがとてつもないかわいい系といった雰囲気を作りだしている。
こういった輪郭や特徴点を抽出してなぞることができれば、萌え系ボイスのテンプレートができあがるのではないかと考えてしまう。そのへんは過去記事「音のデフォルメについての考察」も参照していただきたい。

「電車で電車でGO!GO!GO!れぼりゅ~しょん」の方は『歌・枕木三姉妹』とあって「誰やねん」と思ったが、中の人は民安ともえ、成瀬未亜、壱智村小真といったメンバー。あー、なるほどねと思った。
ちょびっと言葉を選ぶけれども、いわゆるゲーム系の声優さんというのは最近独特な芸風をもった役者さんになってきていると思う。ある意味最先端。
良く『アニメ声』なんて表現があるけれども、アニメーションってのは割と幅広い演技が必要で本当に『役者』として広い範囲をカバーする必要があると思っている。くぎみーだのゆかりんだの萌えキャラ声が有名な人でも「そういう役もできる」という手広い範囲の一角。なんでかというとアニメはそういった続いた時間を演技するので通常の舞台と様式が似通ってくるからじゃないかなあ。
一方ゲーム系はアニメとは違った密度を持ち始めている。本当に濃い部分、おいしい部分、特徴的な部分をさらにこってりと煮詰めて『そこだけ』を提供することが可能である。なので、それに特化した演技というのが発展できる可能性がある。
なので『萌え声』というキャラクター性をもった声質というのがゲーム声優によって形作られつつあるという論を語ってみたい。

キャラクター性のある声というのはどう言うものかという定義からする必要があるかもしれない。
声を聞いただけで誰かわかるとか、声の演技で雰囲気を作り出すとか。通常ストーリーのあるアニメやドラマを超えでやると状況の中で声を出すけれども、声があるだけで存在感がある声優さんというのが居る。八奈見乗児とか、若本規夫とか。あまりにも存在がたちすぎていて、声のフォルムが形作られるとギャグっぽくなってくる。逆にギャグものをやるには、声がある程度のフォルムを持っていないといけない。これが声におけるデフォルメなんだと思う。
それと同じように『萌え』ものをやるにも、声をデフォルメしてある程度の非リアルさに持って行く必要があるのではないだろうか。単純に声が高くてキャピキャピしてればよいというのではなくて、存在感のある非現実的な演技を伴った声でなくてはならない。色々な演技もできてそれもできるというのは一流の仕事だが、そのデフォルメ声に特化した演技が得意というのも世界としては在りかもしれない。それがゲーム系の声優さんなんじゃないかと思う。

で、そんな萌えだのなんだのといったデフォルメ演技に特化できる役者さんは何かというと、絵師と呼ばれるキャラクターイラストレーターみたいなものじゃないかと思うのだ。
昔は漫画やアニメが第一線でそこからすべてが生み出されてきていた。キャラクターとか絵柄とかも。
しかし、80年代以降『イラストレーター』と呼ばれるキャラクター絵をメインとした絵描きがもてはやされるようになる。キャラクター絵は皆が注視するところだし、背景や中割といった実力を必要とする作業をせずにそこに注力するだけでよいので多くの人が志望したくさんのクリエイターが生まれた。
とすると、今度はそのイラストレーターが生み出すキャラクターや絵柄が最先端になってきたのである。
漫画はさほどではないけれども、アニメはその人気絵師の絵柄を取り入れるまでに2クッションくらいの時間を要する感じになってきている。というのも、大勢で作るものだから、みんなで描けるレベルの絵に抽出できないといけないんだよね。そのうち流行の絵柄を取り入れて近づいていくんだけれども、ちょっと時間がかかる。
それに比べるとゲームはダイレクトに流行の絵師を起用できるジャンル。または、ゲームで絵師がブレイクしてその絵柄が流行になったりとかいった側面も持っている。これはキャラ絵だけ抜き出して特化しても作れるジャンルをゲームは持っているからなんだろうと思う。
まあ、そんな感じにゲームと絵師はなんだか独自に先端を走って、その先端がたくさんあって、いくつも消えていくけれどもいくつかの先端は確実に時代の流れを作っているとか、まあそんな風にみている。
で、同じくゲーム声優というジャンルも、キャラクターイラスト絵師と同じく特定のフォルムだけに特化してそれを先鋭化していく分野なんじゃないかなと思った。

キャラクターイラストと同じようにキャラクターボイスも流行の声質や演技というものを次々に生み出して、そしてそれは非リアルなものだけれどもなんだか可愛いくて良いものとして確立していくのだろう。
そしてそういった先に次世代のキャラクターが存在しているのだ。




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