音の『電子ブロック』

「DTM MAGAZINE」という雑誌は音楽というよりパソコンよりなDTM記事なので、初音ミク以前から購読していた。が、例の初音ミク体験版が付いた号から売れ方が激変し品切れを起こすようになったため普通に購読していた人にとってはちとやっかいな状況ではある。
売れることで味をしめてしまったのか、量販店の書籍コーナーなどは大量に入荷してくれるので逆にねらい目となっているようだ。というか平積みで入荷しすぎです>ヨドバシカメラ

プラグインとかの情報のためWEB版のDTM magazine web siteも頻繁にチェックしているのだが、ちょいと前に気になるソフトウェア音源が掲載されていた。
KarmaFX Synthである。
良くあるVA音源(Virtual Analog Synthesizer)だけれどもモジュール型なところが目を惹く。
シンセサイザーに必要な要素をモジュールとして定義し、そこを繋ぐようにプログラムすることで音を作っていこうというタイプの音源。実に、プログラマとしてそそられるものがあるのです。
このモジュール型シンセサイザーというのは十数年前から良くある形なのだけれども、今回は KarmaFX Synth を扱えるだけどDTM環境が手元に揃っている(VSTiホストとなるDAWを持っている)ということで試すことができた次第。

krfs00.jpg
KarmaFX Synth の画面はこんな感じ。これで一つの音を出す楽器。
モジュール間を矢印の付いた紐が結んでいて、信号やモジュレーションコントロールを表している。
最も、このような仕組みは減算型のVA音源では珍しいものではなく。
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このように一枚のパネルになっているからわかりにくいかもしれないけれども、やっぱりモジュール毎になっていて、それをON/OFFしたり効果を増減したりして音を作っていくのは変わりがない。
KarmaFX Synth だとそれが目に見えやすいということと、どんな組み合わせでもできるから如何様にも音が作れそうだということが大きな違いだろうか。

この音をいじくるパーツをもにもに組み合わせていくところが「電子ブロック」みたいだなあと思い、ちょっと楽しくなってくる。線で繋ぐから「マイキット」の方かな。

実際にいじってみる。

karmafx_ss03
最もシンプルな形として、ジェネレータからアウトプットへ直繋ぎ。
実はこれでは音は出ない。いや、実はジェネレータからの信号はでているのだけれども 1Hz くらいの超低周波なので音として聞こえないのである。しかも、発音信号に関係がないので出っぱなしという。
karmafx_ss04
ここに音階を伝える Note Pitch Controller とキーのON/OFFで音を出したり止めたりするための Amplifer を追加する。これで、鍵盤をたたくとドレミファと音階を鳴らせる様になった。
build01.mp3
ここではジェネレータから出てくる単純なサイン波なのでポーという音でしかない。

krfs02_2.jpg
ジェネレータのデチューンを LFO モジュレータで変化させてちょっとうにうにとした音にしてみる。
build02.mp3

これだと押し続けている間だ等圧で鳴り続けるだけなので、エンベロープを付けてポンッといった感じの音にしてみる。
krfs03.jpg
モジュレータでエンベロープを生成し、それをアンプリファのAMPつまみに接続をする。アンプのつまみをモジュレータで自動的に操作することでエンベロープとするわけだ。
build03.mp3
これでピーという音がピンッという減衰を持った音になった。

モジュールには色々なエフェクトが存在する。
krfs04.jpg
ここでは、ディレイとフェイザーをかけてみよう。
build04.mp3
エフェクトは、ディレイ、リバーブ、フェイザー、コーラス、ディストーション、ピッチシフト、ビットシャッフル、コンプレッサーと一通りがある上にかけ放題なのでそれなりな色が出せるだろう。

面白いことに音源としてだけではなく、エフェクタとしても使える KarmaFX Synth FX というプラグインも含まれている。これを使うとエフェクトINをジェネレータとして、色々なフィルタやエフェクトを組み立てる事のできるVSTエフェクターとしても使える。
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卑怯だなーと思うのは、ジェネレーターにサンプラーが使えたり、コントロールに16ステップのシーケンサがあったりするところ。
サンプラーはマルチレイヤーではないので、サンプリング音源として使うほどのものではないけれども、音ネタの可能性としてはぐんと広がるので色々弄っていて飽きない。
絶賛したくなるほどの良い楽器というわけじゃないけれども、いじっていて楽しいし、出てくる音は結構好みだ。でもこういった出音の楽器は楽曲の中で埋もれやすいんだよなあ。

karmafx_sample.mp3
KarmaFX Synth だけを使ってちょちょいと作ったテスト。
KarmaFX Synth は重いのでこれの様に数個使うとマシンが付いてこなくてきっついのが難点。故に適当なところで放棄。

デモ版は30日間フル機能で使えるので気になった方はぜひお試しあれ。
VSTiプラグインなのでホストとなるDAWが必要だけれども、無い場合はFL Studioの体験版で試すのが良いと思う。

かつてムーグ博士は若い頃にテルミンと出会い、それに触れ分解し仕組みを理解することで音を作る事を学んだそうな。
こういったモジュール型の楽器で、どのように音が作られているのかという手順を知り、使いこなすことは学習に最適な手順ではないだろうか。なんといっても即座に音という結果が出てくるので楽しいしね。




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