とあるアニオタのテレビ鑑賞環境、2009年度版
先日私が入居している賃貸住宅でアンテナ工事があり地上デジタル対応となった。2011年の地上アナログ停波まであと2年となったこともあり、流石にアクションを起こす必要があったらしい。
元々今年の春先に工事をする予定だったのだけれどもそれまでのアナログ宅内配線を利用してアンテナだけとっ換える作戦が失敗に終わり、アンテナ線を屋外引き回ししてアンテナ宅内のアンテナターミナル裏に穴を開けて配線するといったことをやらないといけなくなったらしい。3階建の小規模な賃貸なのだけれどもそれでもなんだか1週間近く電気屋さんがとんてんかんとんてんかんとやっていた。ご苦労様です。
地上デジタルのアンテナだけでこれだけの手間と時間と費用がかかるのかと改めて感心。
私個人は入居時にBフレッツの光ファイバを引かせてもらっているので、それを利用したスカパー!光を契約している。地上波放送はそのスカパー!光に含まれているので安定したテレビ視聴環境を一歩先に導入していた次第。
そんなこんなでここ2~3年ほど安定していた我が家のテレビアニメ鑑賞&エアチェック環境だが、環境や機器の変化で再考と導入検討をする必要がでてきたようだ。
案外わかりにくいエッジなテレビ事情。今回はそんなお話。
■地デジアンテナ
地上デジタルへの移行に際し一番の問題はアンテナであるということはずーっと昔の記事で書いていた。居住区域によってはアンテナ問題はどうにもなんないほど面倒くさいというのは年を経るごとに認識されていっているが、でもまだ「必要ないから停波されてから移行すればいいや」と考えている庶民は少なくない。(サンプル:うちの親)
「テレビは無料で見れるもの」という層に対しては地上デジタルの試練はあまりにも過酷すぎるような気がする。すでに移行してしまっている人は気にしないのでなかなかわからないんじゃないかと思うけれども。
しかし、逆を返せば視聴環境にお金を払えればアンテナ以外の経路で解決するといったお話も見えてきたりする。
■スカパー光!とフレッツテレビ
前述のように私はスカパー!光を利用している。スカパー!光はテレビの放送波をFM帯域からCS帯域(今はBS帯域まで)を光ファイバーに乗せて搬送するサービス。NTTのフレッツサービスを利用するが搬送波はインターネットのものとは別になり宅内にはスカパー!用のONU(終端装置)とインターネット用のONUがカスケードで2台設置されることになる。すでにBフレッツを契約しているご家庭ならば、その回線を利用し既存のインターネット用ONUの前にスカパー!用ONUを設置する宅内工事を行うことになる。
うちのエリアは2年前にサービス開始されたので契約していた次第。通常スカパー!はまあともかく地上デジタルが安定してみれるのがうれしいサービスであった。
その契約しているスカパー!光は第一世代のもので、今は第二世代のものがサービスされている。それが、今現在のスカパー!光と、スカパー!の契約をなくして地上デジタルとBSの再配信のみに絞ったフレッツテレビである。
第二世代はなにが違うのかというと、配信帯域が広がりBSデジタルやe2 by スカパー!も搬送されるようになった。地上波アンテナだけでなくBSアンテナも要らなくなるのである。ただし、ONUが第一世代のものから変更になるため、広域帯対応のONU取り換え設置工事が必要となる。(内部的には局側の対応もあるので電話局内の機器も変更になっているはず)
我が家もいずれこの広域対応ONUに変更しなければならないと思っていたがそろそろ頃合いのようで現在工事手続きを進めている。
昨年の広域帯サービス開始のニュースの中で「来春にはHD配信予定」となっているが、これは未だ開始されていない。このサービスが開始されればスカパー!HDも光経由で受信できるため、光ファイバーに集約してアンテナを一切なくすことができるようになる。最終的に目指したいところですな。
■スカパー!HDとAT-X HD!
アニオタ的視聴環境ということでチャンネルの話になるわけだけれども、スカパー!にこだわっているのはアニメ専門チャンネルが存在するからである。キッズステーションやアニマックスなど24時間いつでもアニメを視聴できる環境が存在している。なかでもテレビ東京系のAT-Xはお値段高めだけれども新しめのアニメも地上波とちょい遅れ程度でやってくれるのでお気に入りである。
しかし、番組のほうが着実に16:9のHD作成となっていくに従ってSDオンリーのCSでは画質的に不満が出てくる様になってきていた。16:9の番組は上下に黒帯が付けられて放送されるのだが、そのフレームがSDなのでHDテレビで視聴すると上下左右に黒帯がつき映像領域が真ん中にちょこんと存在している形となる。いわゆる額縁問題である。
なのでできるだけBS/CSでみたいという意向があるにもかかわらず地上デジタルで視聴する番組が増えつつあった。
そんななか突然のニュース。2009年10月からスカパー!HDのHDチャンネルが50チャンネル近くがぽんと増えて放送開始することになった。そしてその中に「AT-X HD!」なるチャンネルが混ざっていたのですな、青天の霹靂。
スカパー!のHD放送は e2 by スカパー!(110度CS)でもいくつか行われているけれども、こちらの展開は今ひとつなのでサービス開始するかどうかもわかったものではない。スカパー!光の方もHD展開が見えてこないし、今のところスカパー!HDを利用するしか手がない状態。
キッズステーションとアニマックスはSD時代はビットレートがAT-Xの半分と低くウンコな画質だったのだが、今回のHD化でH.264 8Mbps ほどになったのでそうたいてきにかなり良くなったのだけれどもね。
スカパー!はチューナーのみの展開なのだけれども、チューナー単体ということでそれそのものの値段を抑えるためにあまりスペックの高くないハードウェアになっているのがいまひとつ。レコーダーとかだと、全部込み込みでそれなりなお値段にできるからUI反応も良いのだけれどもなあ。
■スカパー!HD録画
スカパー!HDでもうひとつ注目なのが、スカパー!HDを録画するための「スカパー!HD録画」という仕組み。
これまでのスカパー!は単体チューナーでの提供だったので、録画をするためにはチューナーのほかにレコーダーを用意してアナログ接続し手動同期でやるしかなかった。レコーダーをリモコン信号の赤外線でコントロールするAVマウスや、東芝のレコーダーの様にスカパー!チューナーをシリアルコントロールするなどのつぎはぎ連携はあったもののどうにも信頼度が低い方法ばかりであった。しかもこの方法ではコンポジットor S端子経由なのでHDには対応できない。
そこでどうするのかという回答が「スカパー!HD録画」であった。録画時のプロトコルをDTCP-IP経由のDLNAムーブとしEthernet経由で外部のHDDやレコーダーに記録するというAV機器らしからぬ展開。LANケーブル一本繋ぐだけだし、HDDも複数台に増やしていけるのでなかなかにうれしい。
記録した番組を再生するには、記録側にこれまたDTCP-IP対応のDLNAサーバーが搭載されていて、チューナーはDLNAクライアントとしてHDDに記録された番組を再生するといった具合。この仕組みの副産物として、ちゃんとしたDTCP-IP対応DLNAクライアントさえあれば再生機器を限定せずネットワーク内のどこでも見れるというメリットが付いてくる。これまではDTCP-IP対応DLNAクライアントなんてSONYのVAIO MEDIA か VAIO MEDIA PLUS しかなかったので、あまり現実的でもなかったけれども、ここにきてPS3やDigiOn の Dixim といった入手できるDLNAクライアントが増えたので俄然魅力的になってきたのではないだろうか。
HDD録画といってもそこから外に持って行けるわけではないしどうだろうと考えていたのだが、今時の外付けHDDが1TBや2TBなのを思い出してハッとする。1GB単位のメディア単価を考えると、Blu-rayのメディアより1.5TBの対応外付けHDDの方が安くなるのだ。1.5TBというと25GBのBlu-rayメディア60枚分、そう考えるとHDDのままでライブラリとして保存するとBlu-rayより体積的に少なくて済む事になる。
ひょっとしたらHDDのままでも良いのかもと一考してしまう次第。メディアシフトもあり得るか?
HDDは録画の終着駅と書いたが、IO-DATAのネットワークHDDでは録画番組を同じIO-DATAのHDDにムーブする機構の提供を予定している。そういったムーブ機構が相互的に行えるようになっていれば、HDDが故障する前により大きな容量のものにムーブしたりといった予備アクションがとれるので安心感が増すのだけれどもね。
しかしこのスカパー!HD録画、提供がアナウンスされてから1年たった今頃ようやく行えるようになってきた次第。今のところHUMAXのレンタルチューナーとIO-DATAのネットワークHDDかソニーのBlu-rayレコーダーでしか対応していない。ソニーの買い取りチューナーとBuffaloのネットワークHDDは対応予定と言いつつまだバージョンアップが行われていない。
私はその辺よく調べないでうっかりソニーのチューナーとBuffaloのHDDを買ってしまったのでいつ対応されるのか待ち状態。
■で、AT-X HD! はどうよ
実際に見てみないとわからないのがAT-X HD! の画質。期待通りに16:9ソースは「額縁無し」で放映されるのか!?
そこは流石にHDチャンネル。16:9はすべてフレームフルで放送されていて、4:3は左右に黒帯がつく感じ。このへんは期待通りでまず安心。額縁付きで真中にちんまく表示されているものを見させられることはなくなった。よきかなよきかな。
んじゃ、ソースはHDかというとこれがちと微妙。HDソースはあんまりない。
どのテレビ局もそうなのだけれども、フレームが16:9だからといってもソースがHDだとは限らない。アニメ配給会社の都合でSD提供されていることが多い、そういう場合アップコンバートして放送するかどうかは局次第。AT-X HD!は普通にアップコンバートして放送している。当然引き延ばしただけなので画質は良くないのだが、額縁のほうが我慢ならない私のような向きにはありがたい。
(アップコンバートしない主義なのがTVKでSDソースは額縁放送になる、ある意味わかりやすい)
で、HD放送だったりアップコンバートだったりするのは2009年10月から開始した新番組の場合。問題はそれ以前から放送していたり、それ以前に買っていたソースの番組にある。
これまでのAT-XはSD放送だったので、16:9のソースはSDの帯つきで放送していた。4:3フレームの上下に黒帯を付ける感じですな。なので通常の4:3番組よりも「解像度が落ちる」ことになる。まあ、SDのAT-Xが我慢ならなくなってきたのはこのへんが原因なのだけれども。でまあ、そういった古いソースはみなこの形なのだけれども、AT-X HD! は黒帯を付けないで放送する主義なので、この真中にちまっと圧縮された16:9ソースの番組を「HD枠いっぱいに引き延ばし」て放送する。面積でいうとSDの0.84倍の大きさのものを引き延ばすので画は結構荒れるというか全体的にぼけている。
わからなくはないけれども、なんとなく悔しい気分。
まあ、このへんスタートしたばっかりの過渡期ということで新番組や新しく買ってきたソースが並ぶようになれば徐々に良くなっていくに違いない。
意外に頑張っているのがキッズステーションHD!だったり。結構な数のHDソースをそろえていたりして、これまでのビットレートの低さから一転非常に見ごたえのあるチャンネルになっている。ついでにいうとANIMAXはそもそもでオールドコンテンツ(ドラゴンボールとか)が主流なので4:3ソースが多くあんまし変わった印象を受けなかったり。ソースによってはSDと同じものを(圧縮ノイズも一緒)で「ANIMAXきたねえなあ」という印象を払しょくするには至らない感じ。
■もうちょっと様子見
今回はちょっとでも早くAT-X HD! を体験してみたかったのと、スカパー!HD録画の可能性を見てみたかったあたりからほとんど人柱的な気持でスカパー!HDを試してみた。
これはこれでそんなに悪くもないソリューションなのではないかと思うのだけれども、スカパー!のために122/124度CSアンテナを設置するというのもそんなに容易なことではない。地デジアンテナよりかはましだけれども、そんなに簡単にアンテナ設置することはできないよというお宅も多いだろう。
なので本命は、実は最初からスカパー!光でのHDチャンネル提供だったりする。今のところ「予定」となっているだけで開始期日がなかなか決まらないのだが、スカパー!光の帯域拡張時にHD提供も織り込み済みの発表がなされているしそのための帯域も決まっているっぽい。これが提供されれば、光ファイバー1本でインターネット/地上デジタル/BSデジタル/e2 by スカパー!/標準スカパー!/HDスカパー!(おまけで地上アナログ)が利用できることになりアンテナを完全に排除することが可能になる。
まあ、それまではアンテナ受信のスカパー!HDで楽しむことにしよう。けれども、もし光のほうでHDが提供されたとしても周波数帯域が異なるからチューナーは使いまわせないのよね。そのへんは注意&割り切り。
スカパー!HD録画もようやくできるようになったといっても対応機材が少なかったり予定のまままだ更新されていなかったりと大分見切り発車的。このあたりも様子見してどうこなれていくかを見守ったほうが良いかもね。とくにHDDへの録画はそれが終着駅になってしまうのでDLNAの出来や、HDD間ムーブ実装が保障されていてほしい。それ次第ではライブラリメディアが外付けHDDという時代が来るかもしれない。