音のデフォルメについての考察

初音ミクを筆頭としたボーカロイドが歌う様々なアマチュア楽曲。そのボーカロイド廃人周辺には「ボカロ耳」という言葉がある。
ボーカロイドの歌声はこれまでに比べれば驚くほど自然に近くなっているが、やはりまだまだ合成音であることが否めない。しかし、そんな合成音でちょっと不自然なところがありまくりな楽曲であっても気にならなくなってしまったり、そんなことはどうでも良くなって素直に歌や楽曲に感動できるようになってしまった様な場合に用いる。どちらかというと妙な合成音声であっても聞き取れるようになってしまったことを自嘲的に表現するような言葉だったりするのだけれども。
そんな「ボカロ耳」という言葉のことについて考えていたら、長年の疑問が既に氷解していることに気がつく。「音の世界でのデフォルメってなんだろう」という事についてである。

今更述べるまでもなく、私は二次元側というか漫画やアニメ、ゲームに萌キャラといった世界が大好きな人間である。好きなだけでなくなんとかそれらをプロデュースできないものかと目論んでいるほどに。
でまあ、二次元と呼ばれる漫画やアニメのキャラってのは当然写実主義とはほど遠く、現実的にあり得ないような描写で描かれているわけだ。そんな絵に描かれたキャラクターに対して「これは別物」と、現実世界を超えて精神的に没頭できるのが良く訓練されたヲタなわけですよ。
そこまで極端な例を挙げなくても、漫画やイラストで写実的ではなく非現実的な描写、表現であっても「かわいい」と思えるキャラクターというのが皆それぞれに存在している。
絵の世界ではデフォルメというかシンボライズされたキャラクターに対して、かわいいとか萌えるとかそんな価値基準を適用することが確立しているわけだ。

では、音や音楽の世界でそういった「デフォルメ」というかキャラクター化というのが存在しえるものなのだろうかというのをずいぶんと前から考えていたのだ。

そして目の前にあるのは「ボーカロイド」という存在しない歌声を作り出すソフトウェア。
私たちは既に、音におけるデフォルメという手法を手に入れていたのではないだろうか。

最もわかりやすい例はファミコン時代のゲームサウンドだろう。あの矩形波と三角波で構成された楽曲はアコースティックな楽曲とはほど遠い位置に存在し、興味がない人にとっては耳障りな「音」でしかない。ゲームミュージックを「ピコピコ音」と称する大人が存在していた事がそれを位置づける。
私らにとってみれば感動的なドラクエのエンディングも、興味が無い人にとってみればピコピコ音で片付けられてしまう。
このとき既に、音のデフォルメ化、漫画と対比するなら「漫音化」していたとみるべきだったのだろう。
リアルであることが価値あるわけでなく、そこにあるシンボライズされたテーマを受け入れ楽しみ、そして感動する。そんな音楽の形態。
テクノやアンビエントなども含んだデジタル系の楽曲は全てがこの要素を持っていたのではないか。

萌え声とかそういった系統の、アイドル声優系、ゲーム声優系のボイスをありがたく拝聴する傾向もそうしたリアルから音声を切り離す過程だったのかもしれない。

そして、歌声もリアルから切り離され独自の価値を持つに至った。
先日聞いたMOSAIC.WAVの「***にできるかな」では、人間とボーカロイドが一緒に歌っていたが「これっぽちも」違和感を感じずに楽しんでいた。
冷静に振り返るとすごいことなのではないだろうかとうならざるを得ない。これもMOSAIC.WAVとみーこによる萌え系電波系AKIBAPOPならではの事だろう。
ヲタの持つ世界を馬鹿にするなよ?

といったわけで、萌えだのかわいいだのそういった音系はもっと認知され世界を広めるべき。
そして現実世界から解き放たれて広大な精神世界へと発展していくのですよ。




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2 Responses to “音のデフォルメについての考察”

  1. 匿名 Says:

    初めまして。
    いつも楽しく読ませて頂いてます。

    ボカロ関連で面白い動画を見つけました。
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm2500715

    rerofumiさんが好きそうだなと思って
    書き込みさせて貰いましたが、どうでしょうか。

    だから何って言われると困ってしまいますがw

  2. rerofumi Says:

    好きかと言われるとどうだろうという気もしますが、見て笑わせてもらいました。
    無謀な事にチャレンジして失敗しているんだけれども、逆に失敗しているから面白いというあたりがアマチュア動画ならではの魅力だなあと改めて感じます。
    音声合成系の動画も自然なしゃべりになっていないからこそ面白いところがあるのですよね。

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