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無駄な才能とニコニコ動画

ニコニコ動画では良くできている動画を褒める形容として「才能の無駄遣い」という言葉がある。もちろん「才能の無駄遣い」というタグもあるので、最初に訪れたときはこのあたりから見て回ると出来の良い動画に巡り会うことができる。
この才能の無駄遣いという言葉が実にうまい具合にニコニコ動画というものを表しているものだと感心する次第。
意味としては「これを職にして稼げるぐらいの技量があるのに、ニコニコ動画なんぞに費やしてばっかじゃねーの」といった感じの褒め言葉となる。実際にプロやセミプロが力を駆使して行っているのではなく、たぶん本職は全く関係のない一般人がそれらを作っている。
だからこそ「才能の無駄遣い」という言葉がしっくりと来るのだ。

ひろゆき氏がascii.jpのインタビュー内でこの事についてコメントしている。
アマチュアで居たがる日本人と、それでも反応が欲しくてニコニコ動画に投稿する うp主の姿は何となくわかる気がする。
そういった事をふまえてニコニコ動画を見ると改めて、埋もれている才能のその多さに驚いてしまう。そして、そういった埋もれた才能を多く引きずり出したという点でニコニコ動画の役割は大きい。
もっとも、これはニコニコ動画だけでなく魔法のi-らんど等のユーザーコンテンツサイト全般にいえることでもある。

そういった埋もれた才能には埋もれているだけの理由がある。
一つは完全オリジナルの物を一本作り上げられるだけの技量が無いこと、二つめに完全オリジナルのものに対し面白がってくれる土壌がないこと、そして何より既存コンテンツを元にした二次創作の方が敷居が低い上にウケも良い事にある。
そこそこ腕の良い程度では、なかなか表舞台には立てない。
とはいえ、燻らせておくのはもったいないというのも事実であり、適度なバランスで作り手と受け手が盛り上がれていたのがこれまでのニコニコ動画であったと思う。

しかし、ここ一ヶ月で大分空気が変わってきた。
一番象徴的なのは、これまで野放しにされていたアニメの無断掲載を権利者が削除し始めたことである。もっとも、これについてはユーザー側でも幾分「そりゃそうだよな」ともやもやしながらも受け入れざるを得ないところがあり、その行為自体は問題ではない。
だが、それも進んでくると波風が立ち始める。
Youtubeも含めてこれまで黙認されてきた「涼宮ハルヒの憂鬱」TVシリーズ本編が権利者削除で消え始めたのである。それまで、権利者がうるさくない安パイであり、ネット上で野放しだったからこそこれほどまでの人気と売り上げに至ったと考えている利用者サイドは大いに面食らった。続いて「らき☆すた」も削除が始まり、これも「俺たちが盛り上げてやったのに」という反発を静かに伴った。
このとき、ちょっとミスをやらかした。涼宮ハルヒ関連を削除した際に、関連MADビデオ(二次創作物みたいなもの)も何本か削除してしまったのだ。この事に利用者は大いなる憤慨を募らせる事になる。
それ以降は派生物はあまり手をつけないで本編映像だけ消えているので、なんらかしらの影響はあったのだろう。

まあ、権利者削除自体はしょうがないところがあるので特にコメントも無いのだけれども、その事象自体はニコニコ動画に静かな変化をもたらす事になる。
無駄な才能が自重しはじめたのだ。
ネットワークは権利侵害しまくりの場と思われることも多いが、最近の若者はそういった権利者が権利を振り回す姿を良く見ている関係上、思った以上に著作権に敏感である。過剰反応しすぎているとも言えるかもしれない。
なので、ニコニコ動画でもTV番組の投稿や視聴は「悪いこと」と知りながらやっている向きの方が多い。(そうでないのも少数いるあたりが面倒くさいところなのだけれども)
そうなると、二次創作をするにせよ、なんらかの動画を作る際は「権利者削除が行われたコンテンツを避ける」という緩やかなバイアスがかかり始めるのである。どんなに面白くても東映版スパイダーマンのMADはもう出てこないだろう。
そうなるとどうなるかというと、ここ二週間は安全と思われているコンテンツの二次創作や、より安全でありつつ自分で作った感の大きい「歌ってみた」系ばっかりになっていくのである。組曲『ニコニコ動画』関連の歌ってみたや、エアーマンが倒せない替え歌を歌ってみた、魔理沙は大変な〜Rimix があふれているのはそういった関係だと思っている。

ここでまた一つ事件が起こる。
カラオケ板でアニソンを良く歌うダンディーボイスいさじ氏が自身の手で組曲『ニコニコ動画』を歌い投稿した。元々ニコニコで人気が高い氏だったので、猛烈な支持とそれに比例した数のアンチファンを発生させた。そして、その動画が「権利者削除」を食らってしまうはめになる。
確かに一般曲(JASRAC管理曲)も含まれているのであり得る事ではあったのだが、削除されているのがこれだけなのでいまいち真相がわからない。アンチの工作によるものだという話しもあるが、もしそうなら悪意をもった個人でどうにかすることができるということで大きな問題を孕んでいそうな気もする。
それよりも、私としては安パイだとみんなが信じていて、大勢が歌をつけた組曲『ニコニコ動画』も権利的にやばいというレッテルが付いてしまった事を見守りたい。コンテンツの権利ってなに、とみんなが大きな不信と停滞に陥るのではないだろうか。
さすがは「コンテンツ大国」。

さらに昨日、そういった権利者要求をくぐり抜け、見逃して貰っていた「らき☆すた」のオープニング動画が削除されるという事件が発生する。
これは権利者削除ではなく管理者削除であるのがよりいっそう面倒臭い。
これはここ1〜2週間、マイリスト登録数ランキングが不正操作されているらしいという事件に起因する。ランキングが存在すると、その数字を巡って憧れとやっかみが渦巻いてしまうのはしょうがないことなのだろうか。そういったランキングが操作されている、いない、実際に行える、陰謀だ、運営対処しろ、といった黒い物が渦巻き、ついにここ数日ではランキング上位の動画はかならず荒らしが発生するといった事態に発展してしまった。
あまりにも目に余る荒らし行為に、やむを得ずなのかひとまず削除して回避するという手にでた様なのである。
このへんも真相は不明なのだが、これまでに権利者削除と管理者削除が頻発しておりその理由が明かされないという理由から燻っていたものが一気に爆発しかけている。
削除方針に対する大いなる不信感である。

これらは現在進行形なのでどうなるかはわからないが、ニコニコ動画は大きく流れが変わっていく物だと考えている。
そして、そうした若干の居心地の悪さは「無駄な才能」を再び埋もれさせることになるのだろう。



つぶやき 11/16/1999

数年前、CD-ROMというメディアが普及しはじめたころ、人々はこれに
熱狂した。マルチメディアタイトルという言葉が飛び交い、クリック
すると絵が換わるだけの紙芝居が乱造された。
その中の一つに「漫画がCD-ROM」になるという触れ込みがあったらし
い。またはCD-ROMクリエイターから新しいタイプの漫画家が誕生する
というのだ。
まあ、ある意味そうかもしれないが、今読むと「なんじゃそら」って
感じではある。
んが、現在でもそれは失敗と言いきれるのだろうか?漫画と同じ形態
をコンピューターにもってきているのなら失敗と言いきっても暴言で
はないだろう。やはりメディアにはメディアなりの形という物が存在
するのだ。TVで漫画は表現できない代りにアニメになっていった様に。
では、コンピューターではなにか?どうやれば漫画的な娯楽となりう
るのか。断言する勇気はないがおそらくは「ゲーム」というメディア
であろう。特にデジタルノベルというメディアは、ゲームの範疇とし
ては少々貧弱だがデジタル漫画としては最高の形態だと思う。現在は
ノベルが中心で絵が添付的だがその比率を逆転させることは十分可能
である。なおかつ分岐という概念はどのメディアにない物で、これが
受け手にとって最大のメリットとなる。
そう言った意味で「ゲーム」をデジタル世界の「漫画」と捕らえてもっ
と作家が参加して貰いたいものである。現状ではコンピューターの知
識がないとできないことなのでなかなか難しいのだが、そういったイ
ンフラは整っていくだろうし整うべきである。HTMLの様に誰でも書け
るような時代が来れば…。
まあ、現状でもHTTP(WEB, HTML)でもって実現されている世界ではあ
るのだけれども。




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