アマチュアが撮るものはポートレートのみなのか

インプレスのAVwatchで連載している “Electric Zooma!” で Premiere Elements 4 のレビューを読んでいて色々と違和感を感じた。
おそらくはここで挙げられている新機能や改善点および使い方などについて、私の使い方、使う目的とはまったく異なるからなんだと思う。もちろん、私自身の事を庶民中の庶民、超一般層であるとか思ってはいないので私の方がヘンだということで片付けて貰っても構わない。

思えば Photoshop Elements も 3 からは大衆指向となり色々な機能が追加されていった。んが、それが非常に余計なお世話でありだんだんと使いにくくなってしまったので Photoshop は Elements を使うのをやめてしまった。
2 までは YMCK やベクターパスを必要としない人にはお手頃な Poormans Photoshop であったのでどう使うかは使う人次第で純粋に道具として存在していたと思う。3 以降は「写真整理」が中心と据えられてしまい、ゼロから絵を描く人のクリエイティブツールには向かなくなってきたのだよな。
初心者にとって便利なように「お膳立て」を行った結果「このような目的に使いやがれ」という、提供者側が想定したユースケースができあがっちゃっているのですよ。
自分の手で何かを作ることを目的としている私にとってそういった「想定」があるのは煩わしい以外の何ものでもないのです。純粋な道具を提供してくれよぅ、となると結局プロフェッショナルツールズになってしまうといった次第。

そういった「利用の想定」で最も多くて不快なのが、「自作ビデオは顔出しのファミリーポートレートである(しかない)」という奴ですな。これは国内の動画投稿サイトの大半に見られる臭いだと思う。
私もここしばらくは色々な動画を作って投稿してきたが、そういったライフスナップは一切存在していない。あくまで自分の腕で何かを作っている動画、もしくは作った結果の動画である。自主製作映画とか自作アニメなんかもホームビデオとは異なる存在である。
そういった意味で先の Premiere Elements 4 のレビュー内にあった

米国におけるYouTubeの受け止められ方は「Broadcast Yourself」のキャッチフレーズ通り、自分を放送するメディアとして捉えているようだ。このあたりは日本とはすでに温度差が違ってきている感じがする。

の部分に異を唱えたいところである。
その温度差をどう感じるかはニコニコ動画の信者であるかどうかで変わるんじゃないかと思っている。
正直、先に書いた様な自主製作コンテンツを掲載するにふさわしい動画投稿サイトはニコニコ動画以外に存在していないと思う。色々見て回ったが、他の所にはとても投稿する気になれなかった。そして、逆にニコニコ動画ほどファミリーポートレートを投稿するに向かない場所も無い。
ニコニコ動画は今やオタクリエイターが凌ぎを削る闘いの場なのだ。(例:初音ミク)

まあ、そんなところからはちょっと離れて別の話題に。
今し方ニコニコ動画を覗いたところ総投稿動画数は 475,396本であった。内容はさておいて、この47万本の動画は何を使って作ったと思う?
そう考えると、動画編集ソフトにとってもの凄い需要市場がここにはあるのではないだろうか。
実際利用者を眺めていると「ニコニコに投稿したいので動画編集ソフトを使ってみた」という超ビギナーがゴロゴロと存在している。そういった人達が何を使っているかというとWindowsXP添付の「Windows ムービーメーカー」である。なんせ、無料で使えるわけだからね。結構良くできたMADであってもムービーメーカーを使っているとかいう人がいたりして逆にびびったりもする。
先に書いたようにニコニコ動画はネタコロシアムでもあるので、動画編集無しの投稿などほとんど考えられない状況にある。「ねこ鍋」だって大盛り、特盛りとかテロップが入っていたしある程度編集されコンテンツとして完成していたからいっそうの人気を博した。
そういった点でムービーメーカーを作成し添付し続けていたマイクロソフトは評価されて良い。

今度はそれとは逆のお話。初音ミクインパクトである。
VOCALOID2 初音ミクはある意味話題になりすぎた。本来買わないような層まで買っちゃったのである。その結果どうなったかというと「音楽って何で作れば良いのですか」である。
DTM はセミプロ以上の世界でしか生き残っていなく、それ以下ではほとんど存在を忘れられかけていた。そもそもで、PCの大衆化において音楽はなぜかリスナーとそれ向けのプレイヤーばっかりが注目され、音楽を創るという行為がさっぱり語られてこなかったと思う。
Windows においてはあれだけ山ほどの添付ソフト(あれはOSじゃないアプリの塊だ)があるのに、音楽作成や編集となると WAV編集すらままならない状態である。
なにせ初音ミクが15000円であることを「1万円以上もするソフトなんて高すぎる!」とか言っているのが普通なご時世になってしまったのである。そんな層に 3万円以上もする DAW をほいほいと勧めるわけにもいかないよなあ。
そういった事を考えると Macintosh はすげえのである。GarageBand が標準で入っている。
思えば PodCast が流行ったときも「じゃあどうやって作るの」だったのだけれども、Macintosh においては GarageBand を使えば良いだけの話だったし、ちょっとしたメニューを追加して「PodCast対応にしました」とか言っちゃってた。
Windows にも GarageBand ほどのサウンドクリエイティブツールが付いていれば、今回の初音ミクインパクトに呼応できただろうし、良質な楽曲をもっと早いスパンで沢山生み出せたかもしれない。
そもそもで、ムービーを作る事ができてなんで音楽を作ることが置いてけぼりにされているんだろう。オリジナルコンテンツは全ての要素をまんべんなく創る必要があるというに。

CGMとかご大層な用語もあるけれども、現代は様々なメディアがユーザーの手の内にあって、ある日突然コンテンツ作成供給側に回りかねない状況にあると思う。
その、不意に作成供給したいと思った芽をつぶさず伸ばすように先行者は土壌を用意しておくべきではないだろうか。




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