SIG-Indie 6 「同人シューティングゲームの潮流」いてきた

IGDA日本 同人・インディーゲーム部会第6回研究会(SIG-Indie6)
「同人シューティングゲームの潮流 – 80年代から現代まで、変化から学ぶ実践的な普遍性 – 」

IGDA日本が以前から同人ゲーム制作者を集めて色々発表やディスカッションを行っているのが SIG-Indie。以前からやっていることは知っていたんだけれども、ノベル系に偏っていたり(これは絶対数以上に型月やひぐらしのヒットが目につきやすいから?)商業との距離が近い感じがする雰囲気を漂わせていたのでちと静観していた次第。
だけど今回はシューティングですよ!シューティング!シューティングという文字を見てWEBをクリックしてみたら3D FPS戦争ゲームでひたすらがっかりする最近の流れとは全然ちがって、バッチリと2D段幕系の日本的なシューティングゲームですよ!

感想を先に言うと、思っていた以上に面白かった!
なぜか発表者全員「私の大好きなシューティングゲームは○○です」ともれなく宣言してるし、「開発中には○○をやり込んでいたので多分にインスパイアされています」という台詞もほとんどの人が言っていた。喋る方も聞く方も本当にゲームが好きで、好きすぎるから自分で作っているというのがビンビンに伝わってくる。プレゼンを通じて「うけるためには」「売れるためには」といった言葉がほとんど出てこなかったそんな勉強会。
後の方の若い人(といっても20代)ほどプレゼンはつたなくなっていくのだけれども、その分ゲームに対する熱意がだだ漏れ状態でもう聞いてて面白くてしょうがなかった。
「好きなゲームは○○でそれにインスパイアされて作りました」なんてノベルゲームの方じゃほとんど聞けないんじゃないかなあ。「○○は俺の嫁なので、その嫁に近づける様キャラクターを作りました」とかになっちゃうのかな。

意外に思われるかもしれないけれども「東方project」の名前はほとんど出てこなかった。みんな腫れ物に触れないようにさけている感じ。ようやく名前が出てきたのも中盤過ぎてからで、それも紅魔郷以前のPC98時代のものだったり。
これはその場にいるとなんとなく理由がわかる気がするのだけれども、説明するのがちょっと難しいなあ。
なんというか、今回の勉強会はシューティングが死ぬほど好きな「プログラマー集団」なのよね。これだけのプログラマー率が高いジャンルというのも同人ゲーム業界にとっては珍しいのじゃないかと思ってしまうほど。なので、弾幕そのものやゲームシステムに尋常じゃない入れ込みと考察、そして自分なりの実装を行っているといった具合。あんましキャラクターや世界には思い入れが無いというか、それで回っている世界はちと引いて見ている様な感じなんじゃないかと。

今回は80年代、90年代、00年代とセグメントをわけてそれぞれでの同人シューティング作者が「当時の時代背景と同人の関係」を語るといった構成。2Dシューティングがメインストリームから離れているという立ち位置から、こういう流れになっているのかね。
80年代、90年代を語る人たちはシンプルな本来のゲーム性を説きつつ「制限がある中で作れるものを仕上げる」事の大切さを伝えるような内容。ABA Games の長さんはBulletMLとBulletMorphを元に「弾幕を作るための工業学」研究を解説。
よっしんさんは「超連射68k」の制作を語るというより、当時のゲーセンが担っていたコミュニケーションスペースとしての役割と、そこで腕を見せるスタープレーヤーの存在についてのお話。シューティングというかハイスコアラーの腕前をみたり周囲に見せたりといったスター性がコミュニケーションを生んでおりそれがシューティングの楽しさだという前提で、TASやチートによりスーパープレイの価値が崩れコミュニケーションが存在し得ない現代に警鐘を鳴らしていた。
00年代同人シューティングのセクションが一応今回の主題。
都合4サークルの発表だけれども、前半2つが大規模的タイトル開発の実際。プロトタイプを4つくらい作っては壊しをし、完成させていく過程。完成度は高いのだけれども、その分制作期間に10年とか5年とかいった時間単位が平気で出てきている。割とそんなもんじゃろと思ったりもするのだけれども、この時間を若い人は許容できるのか、それくらいの覚悟で臨めるのかといったあたりが気になる。
完成させるまでの制作モチベーションの維持という話題についてはもうSIG-Indieの定番お題目になりつつあるらしく、またか的な空気。でも少しずつ進めていけば、いずれこれくらいのものになるんですよという感じで。

ざっくりと見ていると00年前半の同人シューティングは縦スクロール弾幕シューティングなのだけれども、その内分は「首領蜂フォロワー」と「RayForceフォロワー」の2系統があり、まったく別ものなのだなあ。で、今回の発表者は後者ばかりだったので一層東方プロジェクトから離れていたというのもあった感じ。
00年代半ばからはなぜか横スクロール同人シューティングが増えるという現象が見られる。だいたい「スグリ」のあたり。これは以前友人とも話していたこともあるのだけれどもなんでかが良くわからないのだよね、特に大ヒットした横スクロールタイトルがあったわけでもないし。デススマイルズもあんまり関係がないというか、なぜか「MagicalChaseフォロワー」っぽいのが多かったりするしどういう流れなんだろう。

それと先に書いた様にほとんどの人がプログラマーだったり、シューティングを作るためにプログラミングを会得したりといった状況。プログラマーが大好きなゲームジャンルであるうえに、プログラマーが「一人で作ることができる」数少ないゲームジャンルなのかもしれない。
欧米のシューティングというとFPSや3Dアクション系の「戦争アクションシューティング」がメインになりつつあるけれども、日本の2D弾幕シューティングはそれとは全く異なる位置に存在している。これは、海外のゲームが現実世界のシミュレーションでありリアルであればあるほど面白いのに比べて、日本のゲームはひたすら抽象化された記号化の世界だとも言い換えることができる。昔から言っている言葉を繰り返すと「アメリカのゲームは映画で、日本のゲームは漫画」同じものではないので並べて比べるのは間違っている。
そしてそういう抽象化やモデリングといった作業はプログラマーの得意とする分野でもあり、ならではな手腕を発揮できるところなのではないだろうか。

ラストのパネルディスカッションは時間が少なくて残念。
ちょうど私が最近考えていたあたりがちょうどお題として上がっていてもう乱入して喋りまくりたかったほど。せめて、もう少し長くいろんな議論を聞きたかった。

なんかもう書きたいことが山ほどあるけれども、このへんで。
じつに良い刺激となりました。




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One Response to “SIG-Indie 6 「同人シューティングゲームの潮流」いてきた”

  1. miyayou Says:

    司会の三宅です。感想ありがとう。良い刺激になって何よりです。

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