電子ペーパーブックの良いところ悪いところ

ブラザーが電子ペーパードキュメントビューワを発表ということで話題になっている。
良い感じのデバイスだけに「おおおっ!」とみんな盛り上がって、14万円と値段が発表されると同時にしぼんでいく姿が、いとおもしろく。
日本ではアマゾンの Kindle が売られていないので、現状電子ペーパーブックの類は iRex の iLiad を買うしかない(リンク張らないけどAmazon Japan で取り扱っているので入手は容易)。これも 6〜7万円するからどうだろうといった感じですな。

そんな様子を眺めていたら懐かしくなって部屋の奥底から引っ張りだしてみた。
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電子ペーパービューアの第一号機、ソニーのリブリエである。発売は2004年。
こういうのは実際に所有して使いこんでみないと見えてこないところがある。というわけで、振り返ってのレビュー。ちょうど、電子本を販売する TimeBook も今年2月末で閉店、撤退したところだしね。そういうタイミング。

TimeBook で何冊か本を買って読み通しているけれども、読書感は普通。めちゃくちゃ良いわけでもないし、悪いわけでもない。ただ、どうしてもシーケンシャルな読み方になるので「あれ?あのときなんて言ってたっけ?」とか思って数十ページ後ろを見返すとか言うのが困難。逆に、あと何ページでこの章が終わるからそこまで読もうという先読みもできない。後何ページかというのもわかりにくいので、読み方に計画を立てづらいというのもある。このへんのアクセス感覚は本でないとだせない味だと思う。
ページ切り替えは早くはないのだけれども、普通に読み進めていくには割と困らない。けど、ちょっと読むのが早い人が小説や新書をざくざく読もうとすると、切り替え待ち時間と読んでいる時間が同じくらいになってしまって時間を無駄に消費している感が出てきてしまう。
でもそれを我慢しても電子ペーパーの読みやすさというか目へのやさしさはかなりなもので、そこは是非評価したい。特にありがたいのが、周囲の照明が若干暗めでも読みやすいし目が疲れないところなのですよ。
なんといっても嬉しいのは小さくて薄くて軽いので鞄に入れるのも出すのも容易なところ。実際に本を数十冊携帯できる、というところが何よりも嬉しかった。
んが、読む部分以外は遅くてだめだめな感じ。メニュー操作とかコンテンツ選択とかボタン押してから数秒待たされるのでどうにもイライラする。電子辞書機能もついているけれども、あまりの遅さに使う気が起きないほど。このへん、リブリエが売れてさえいれば二号機、三号機と発売されていき今頃は実用になるガジェットが手に入っていたんだろうなあ。マシンパワー的な所は発展に期待できるところだし。
けど現実は売れなかったので、現在の Kindle とかでもめざましく進歩していたりはしなかったりする。値段的にも。

個人的には結構筋の良いアイテムとして気に入っていた。しかし、それは通常の使い方ではないところにあったりする。
リブリエは BBeB 形式という業界団体で作った電子ブック規格のフォーマットを表示する。だが、業界のごにょごにょがあるのだろう、一般向けにオーサリングソフトは発売されていない。ユーザーが用意したいわゆる野良コンテンツが作れないという状況にあった。
まあさすがにそれはどうだろうということで後々に、印刷結果をビットマップとしてリブリエに転送できるプリンタドライバが提供されることになったのである。これで手持ちのデータが制限付きながらあれこれとリブリエで閲覧することができるようになった。
でまあ、このプリンタドライバを使って同人誌(マンガ)を転送して読むとかなりいけているのである。
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イメージとしてこんな感じ。サンプルとして当たり障りがないところとしてぴょんきー松尾のキミキスマンガを無断借用。
使ったよー>ぴょんきー松尾。今伝えた。
でまあ、漫画のデジタル販売もあるけれども大抵は変な形式でDRMがかかっているので印刷なんかできっこない。なので、利用するのは DL-site などでダウンロード購入する同人ものが中心になりがち。これなら普通のPDFやJPEGやTextなので、リブリエへと印刷して持ち運び放題。
ま、なにかというとやっぱりコンテンツ次第なのです。
最近はほとんどのオンラインマニュアルがPDFなので、そっから印刷して持ち運ぶというのもありかもしれない。
ただ現実問題として、
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文字がちっちゃくて読みにくかったり、潰れたりするのよね。
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割とぎりぎりな感じなのが見えるだろうか。

とまあ、ネタさえあれば割と良い感じのデバイスである電子ペーパーブック。だが、ちょっと触っただけで「だめだこりゃ」と痛感するただ一つの理由がある。
先ほどからちらちらと見え隠れするDRMの存在である。
ソニーも松下も電子ブックに既存の出版業界をのせるために、がちがちのDRMを用意してあげていた。その結果、一般ユーザーがコンテンツを提供することもできないし、バカ高いダウンロードコンテンツを多くの束縛付きで利用せねばならなかった。
TimeBookなんかは2週間ほどの時限提供(レンタル?)だったのだが、これが決定的に私には合わなかった。私は本屋に行くと、あっこれよさそうとぱこぱこ買うのだけれどもすぐには読まずに「積ん読」するクセがある。最近なんかはライトノベルをよく読んでいるが、その積ん読ストックは
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こんな感じである。連続ものとかも1〜2冊常にストックしておいて、その時の気分や重たいのを読める状況かどうかでストックから引き出して読む感じになっている。
で、TimeBookでもついこれをやってしまいがちだったのだ。WEB店舗をぱらぱら見ていると、あっこれ読んでみよう、これも良さそうだ、というのがいくつかあって買うのだけれども、結局1冊とか読んでいる間に他の本が期限切れになるとかいった塩梅。じゃあ、メモして置いて読む寸前で買いなよとか思うのだけれども、買うときのノリと楽しさって読むときとは別物だと思いません?それとか、せっかく数十冊も持ち歩けるのに、結局時限式だから1冊づつしか持ち運ぶ意味がないという。
リブリエプリンタドライバは抜け道ではあったのだけれども、この利用許諾に「作成したデータを配布してはならん」という項目が含まれている。これでまた大いに萎えてしまう。電子ブック用のコンテンツを自費出版もしくは同人誌として作成して配布することはどうにもできない。つまり、既得権利者のためのデバイスでしかなくて利用者のためのものではないということか。
まあ、結局このへんのDRMや業界縛りがあって電子ブック事業は多くが頓挫。波に乗ることができたのは、DRMが透けて見えない携帯電話業界(とそこに提供している出版社)といった状況。
あれあれ、どっかで聞いた話ですね。
そう、MP3等を巡ってのポータブルオーディオと同じ状況ですな。コンテンツホルダーの意見を取り入れてきちんとしたDRMを作り上げたソニーと松下が失敗しているとかいったあたりもそっくり。
そんな折、「Appleがタッチパネルデバイスと電子ブックを準備中?」という噂が流れてくる。
また下地ができたところでかっさらっていくブレイクスルーとなるのだろうか。でも Amazon でも苦労しているのでそんなに綺麗にはいかない?

結局、キモはDRMの緩さとユーザーコンテンツの許容、それと案外使えるオンラインストアとのバランスなのですよ。




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One Response to “電子ペーパーブックの良いところ悪いところ”

  1. あたたん Says:

    DRMがらみはいろいろ同意です。。。
    キナ臭くてここには書けないですけど。

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