コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

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3Dプリンターというのはテーブルの上に1層ずつ形状を積み重ねていくのだが、その一番下の層はテーブルに張り付いていないといけない。経験者でないとイメージしにくいかもしれないが、この一番下の層をテーブルに貼り付けるという部分が非常に重要で難易度の高い箇所となる。
樹脂がしっかりと食いついて剥がれないようにしないと、出力中にズレたり動いたりして出力が失敗する。また、完全に固着してしまうと完成後にテーブルから剥がせなくなってしまう。
そういった事から 3Dプリンターのテーブル表面は、容易に食いつき剥がれにくいけれども最後綺麗に剥がすことのできる適度な張り付きをする事が求められる。

私が最初に手にした 3Dプリンターは CupcakeCNC だったのだけれども、これは当初 ABS のみであった。ABS を食いつかせるために当時はアクリルのステージだったのだけれども、癒着して剥がせなくなるという事から様々な研究が重ねられて温めたガラスまたはポリイミドテープ(商標名でいうとカプトンテープ)を用いるのが良いとされた。
その過程をへてポリイミドテープとホットテーブルの組み合わせに ABS を出力するというのを長らく利用してきた。Replicator(第三世代)に移行しても、ホットテーブルを使い続けていた次第。

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長いこと使い続けているうちに Replicator(第三世代) にもガタが来つつある。ホットテーブルが温まりにくくなり、以前の様に 110度まで上げるのが困難になってきた。
そもそもで出力時ホットテーブルを加熱する時間というのが長くて結構な待ち時間になるので、ホットテーブルを用いない PLA の方が短時間で回すには有効なのである。
これはそろそろ PLA の方に主軸を移す頃合いかなと考える様になってきた。

ところが、ポリイミドテープへの PLA の食いつきというのはそんなに良くないのですな。できなくはないけれども、あまり強くないので良く失敗する。
ホットテーブルとポリイミドテープを使わずに、PLA で出力するにはどうすれば良いのか。
3Dプリンターの食いつき問題を解決するためには、テーブルにマスキングテーブルを張るのが良いとされている。

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テーブルにマスキングテープというのは昔からの定番で、うちの Blog でも 2010年に取り上げている。(Cupcake CNC 出力テーブルのメンテナンス素材)
この時はホットテーブル+ABS で出力だったのでポリイミドより食いつきが良くなくてイマイチかなーという判断だったのだが、PLA を扱う人にとってはナイスな選択として愛用されていた。
私もこのマスキングテープを持っていたので改めて PLA 出力で使うとたいそう具合が良い。
しかし、過去の実験においてマスキングテープなら何でも良いわけではなく、3M の黄色い奴(できれば幅広の243J)に限るということもわかっていた。

コレの入手性はそんなに悪いものでもないのだけれども、ホームセンターでないと買えない程度には販売場所が絞られている。
ひょっとしたらもう少し入手性が良くて、なおかつ食いつきの良いテープが存在していたりするんじゃないだろうか?
そんな事を思い、なおかつ好奇心を満足させるためにいろんな種類のテープを食いつき素材としてテストしてみることにしたのか今回の記事である。
各種テープは 100円ショップダイソーで売っていたものをできる限り集めてみた。

それでは、良かった順に結果を見ていこう。

■ 1) 塗装用マスキングテープ
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塗装用として工具売り場にあった紙製のマスキングテープ、2巻セット。表面がざらざらのシボ加工(クレープ地?)されていてそのおかげで食いつきが良い様だ。
3M と比べてメチャクチャ向上というわけではないけれども、ちょっと良い程度の食いつき度。
幅が 18mm と狭いので並べて張るのが手間だけれども、安価なので入手しやすい限りは有効かも。

■ 2) デコレーション用コットンテープ
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最近のデコレーション用デザインマスキングテープブームに乗って同じ陳列棚にあった綿のデザインテープ。テープ上の綿に両面テープが付いているもの。
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表面が布なので、PLAがいい感じに絡んで食いつくのです。他のマスキングテープにない感触。
ちょいと厚手なのと、単価が高くて長さと幅が無いのが欠点。たぶん在庫も数ないし、今後の入手性にも疑問視。
安定して推せないかなー。

■ 2.5) 3M のマスキングテープはこの辺のにランクされる

■ 3) デザインマスキングテープ
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模型や工業をやっているとモヤモヤする最近の「マスキングテープ」ブーム。それで使われるデコレーション用のデザインマスキングテープ。
デザインマスキングテープと一口にいってもいろんな種類のものが出ているので難しいのですが、ちゃんと紙製のものであれば 3M の奴とほぼ同性能が期待できるようです。
テーブルの上もちょっと可愛くなる?

で、ここまでが大体 3M の奴と大差ないレベルで使えるやつ。
ほとんど紙製ですな。

■ 4) 塩化ビニルテープ
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アメリカ人が家庭内補修になんでもかんでもダクトテープを使う様に日本人が家庭内補修で何にでも巻き付けてしまうテープの王様、ビニルテープ。絶縁性に優れているので電気機器をぐるぐる巻いたりする。
意外な事に PLA が食いついて出力することができた。食いつきの強さは 3M のマスキングテープよりちょっと落ちるかもなーといった程度だけれども、十分な性能。
使った後もテーブルから剥がしやすく優秀。
なんと言っても入手性が良く安いので、小物をガンガン作っていくときに使っていきたい。

■ 5) 透明梱包テープ
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最近段ボール梱包用に使われる透明度の高いポリプロピレンテープ。メチャクチャ安く入手できる割に食いつくのでしばらく使っていた事がある。
改めて使って見ると食いつきが弱く、樹脂の反りに負けて剥がれかけていた。試験のときは最後まで出力できたけれども、あまり使わない方がよさそう。
こいつの場合は耐熱温度が低いので熱で PLA と融着してしまうことを期待して使う事になる。なのでテーブルの温度をちょっと上げてやったりすると効果は上がる。
ノズルを近づけすぎると熱で破けてしまって、テープ自体がテーブルに張り付いて取れなくなるのでそういった意味では面倒。

ここから下は残念さん。

■ 6) 仮止め、養生テ-プ
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DIYコーナーでお馴染み、手でちぎることができて剥がしやすいテープ。素材はポリエチレンクロス。
最初は良いのだけれどもすぐに反って剥がれてしまった。
入手性が良くて身近にあるものの使えない様だ。

■ 7) 布テープ
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通称ガムテープなあいつ。基材が布ってだけで、表面はポリエチレンでコートされている。
そのポリエチレンコートへの食いつき度合いはどんなもんか期待したのだけれども、最初だけですぐにめくれ上がってしまって 3層目で剥がれた。

■ 8) クレラップ
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テープじゃ無いけどついでに試験。素材はポリ塩化ビニリデン。
耐熱温度が低めなので融着するかなーと思ったけれども思ったより溶けないのと、溶けるときは薄いのであっというまに破けるのとで食いつきには関与しなかった残念さ。
一応一層だけ載ったりするけれどもポリエチレンより剥がれやすい。

以下、樹脂が全く乗りもしないワースト2。

■ 9) プリンター用ラベルシート
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紙なら食いつくのかという試験のために、レーザープリンター用のラベル紙(シールになっているやつ)でテスト。
つるつるした紙はポリエチレン以上に PLA が食いつかないのです。

■ 10) クラフトテープ
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今回のワースト1。紙基材のクラフトテープ。
一般のクラフトテープは剥がしやすい様に表がてかてかにコートしてあるけれども、そうじゃないざらざらの質感のものを見つけたので試してみた。幅も広いし安いしコストパフォーマンスよさそう。
けれども、PLA を弾きまくってこれっぽちも載ってくれない。全部ノズルにまとわりついて終わり。
さらに言うと試験後テーブルから剥がすのも困難で最低な結果に終わるのであった。

■ おまけ
紙製のマスキングテープで PLA が食いつくので出力が容易というのは言われているが、糊(接着剤)を利用して強制的に食いつかせるというのも良く用いられる。
「ヘアスプレーを使え」なんていうのはそれの最たるものだが、最近の 100円ショップには紙工作用のスプレー糊が売っているのでわざわざヘアスプレーである必要は無いように思う。

使う糊についてはアラビアゴム系だったりポリビニルアルコール系だったり定番は特に無い。
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個人的にオススメしたいのが「乾くと付箋紙の様にはったり剥がしたりできる」のが売りのアクリル系接着剤。ピットマルチ(商品名)は学生時代からのご愛用。
これなら出力後剥がすときに困らない程度の粘着力となるし、乾いた後何度も使える。

■ まとめ
結局、これまで通り「3M のマスキングテープがベストチョイス」というあたりは変わらないようだ。
紙製のテープであれば代用品が見つかるので、入手しやすい奴で代用することができるというのが確認できたところでしょうか。
あとは塩化ビニルテープの様なコストパフォーマンスの高い奴をリリーフに使うと便利といった感じだろうか。

他にも「これ良いよ」という情報があったら教えてほしい。

2 Comments to “3Dプリンターが喜ぶテープを100円ショップで探す”

  1. zop Says:

    養生テープの上に紙テープ。その上に接着剤を塗って乾かす。
    これで完璧。

  2. 通りすがりのグルーガン好き Says:

    クーキーなどを焼くときに使うクッキングシートはどうですか?
    グルーガンが剥がれやすいことで有名なので、食いつきが悪いかもしれませんが、、、

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