コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

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ちょっと前に DIP 28ピンパッケージの LPC1114 Cortex-M0 マイコンが話題になっていた。
ついに DIP パッケージの ARM マイコンが発売されただとか、それが秋月電子通商で購入できるからお手軽だとかプチ盛り上がっていた。トラ技の付録としてもついてきていたんだっけ。

そんななか「600mil パッケージダサい! 300mil にしる!」という声を受けてパッケージを削る記事が非常に面白く、動画と合わせて笑いながら拝見していた。
「LPC1114のDIPを600mil→300milにしてみました。」
動画

みんな DIP 好きねえ。

上の削ってパッケージを加工するというのは技術的に面白いので完結しているのだけれども、みんなが DIP を欲しがる理由というところでちょっと考えていた。
DIP でないと困る理由としての大部分が

  • 面実装部品はプリント基板を自作しないと使えない
  • ユニバーサル基板やブレッドボードで工作している
  • 変換基板を使うと幅が広すぎてブレッドボードに載らない

といったあたりなんではないかと思われる。
大抵は試作とか学習が目的でケースに組み込む訳ではなく、実は縦方向の空間に対してはどんなに延びても構わない事の方が多いんじゃないかと。

ということで 300mil 幅 28ピン DIP の変換基板(ただし縦に長い)の制作を考え始めたのであった。
変換するチップはなんでも良いのだけれども、個人的趣味で PSoC5。
Cortex-M3 の PSoC5 はとても面白いマイコンなのだけれども足つきのやつは 0.5mm ピッチの QFP100 になってしまう。私の環境では、CNCフライスでの修行の成果でそれを載せる基板を自作できるようになったものの、流石に 0.5mm ピッチはぎりぎりで作るのも実装するのも大変。とても気合いが要ります。
なので実験用基板があると自分としても嬉しいので作成してみるのです。


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まずはキモとなる T字組み合わせ部分を試作して確認しながら進めていく。
どうやって 90度の T字に立てるかとか。2基板の間を接続するかとかは長らく頭の中で設計を繰り返していたのだけれども、ワイヤーで配線とかだと強度にも問題があるため「ホゾを組み合わせて、根元をハンダ付けで固定する」といった形となった。ハンダで固定という事が決まったら接続部分もカードエッジをハンダ付けすれば良いだろうと言うことでいけそうなところに落ち着きます。

一番心配なのはホゾの精度。
凹型の穴を掘るのだけれども、エンドミルの関係でどうしても角丸になってしまう。その中で何とか組み合わせられる様にしつつ適度に精度を出していく。
使用するツールが直径 1.0mm というのは決まっているのでそれの R の付きかたを検討しながら作ってみた。
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これが意外とうまくいったので手応えを感じて、PSoC5 変換基板の設計が始まった。

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回路図とピン対応表。
PSoCer ならピンとくるかもしれないけれど、DIP28ピンに引き出す I/O は PSoC1 の CY8C29466 にできるだけ近くしてある。SWD も ISSP と同じピン配列になっているかな。
P1 相当がちょっと入り乱れているけれども、SWD/USB といったおいしいピンを出しておきたかったのと、シリアル通信をするための特殊なSIO(スペシャルI/O)をここに持ってきたかったからというのが理由。

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ざくっと基盤設計。
このサイズにまとめるのはちと難易度高かったけれども、汚いなりになんとか引き終える。

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CNCフライスで試作。
片面基板しか作れないので、いつも通り表と裏の二枚を作って貼り合わせスルーピンで接続する方法。

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組み合わせイメージ図。
存在感としてはバッチリだ。

ときめきを押さえ切れずに実装していくよー。
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QFP100 の手ハンダは今でも神経を使う作業。ちょっとでもズレると基板毎パーです。投げ捨てです。
キモとなるのは最初にきっちり位置合わせをすることなのだけれども、これが意外に難しい。両面テープだとズレていた時のやり直しが難しいし、上からテープ止めだと手を離したときにまたズレてしまったりとか。
そこで今回は、フィギュアや家具を固定する粘着ジェルを使ってみた。「ミュージアムジェル」とか「ガチャピタジェル」とかいった名前で模型コーナーに置いてあるやつ。
これをひとつまみ基板にのせて、上からチップを押しつける。
グニグニと好きなだけ位置合わせができるのでとても便利で良かった。逆さにしても落ちない程度にはくっついているので、ハンダ付け時もずれがなく安定した実装作業ができたのです。
こういった接着剤で固定するのは常套手段なれども、リフローをするのであれば焦げてしまうので使えないところ(シリコングリスならいけるのかな?)。
まあ手ハンダ目的ならなんでも良いけれども。

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両面基板やスルーホール接続が作れないので、裏表2枚の基板にして、ビアをスルーピン(スズメッキ線)でハンダ付け接続していく。
これができるのは、穴開け位置が正確な CNCフライスならではだよね。
スルーピンの手作業ハンダ付けは正直めんどいけれども、両面基板の試作が自宅でできるという方がよっぽどありがたいのでがんばって作業作業。

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ハンダ付け完了。
この時点で PSoC5 のチップにプログラミングできることが確認できた。
んが、I/O が空いているからとおまけで基板上に付けたチップLEDが点灯しないことが判明。設計ミス。上で掲載した回路図では修正済み。
やはり試作重要。

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DIP 幅基板に組み合わせた後、ハンダ付けして完成。
ピンからは信号が出ているので、LEDチカチカさせて動作を確認。
できた!

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DIP 28pin の PSoC1 基板があれば換装して即動作可能、かもよ。

今回作成した、Bsch3 の回路図と、K2CAD ファイルと、ガーバーデータ。
Download: PSoC5_DIP28.zip

実験、試作はまずまず成功。
大変存在感のある変換基板なので、ぜひともいろんなチップを載せたものが出てきて賑やかになって欲しいところ。

なんかプロジェクトネーム付けておこうか。
墓石くんだとちょっとかわいそうなので『やえりん』と名付けておくことにしよう。やえりんボード。

自分にとってはこれまでの延長であり作れることを疑いもしなかったものなのだけれども、ひょっとしたら自宅でのプリント基板試作における一つの到達点なのかもしれないなあ。

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