コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

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はんだリール台を 3Dプリンタで作ってみた。
斯様な小物は Thingivers でもメジャーなアイテムで、“solder” で検索するとはんだリールだけでもいくつか見つかる。

こういったアイテムを自作していくのが家庭用 3Dプリンターでの醍醐味であろう。

さて、今回はこの小物を作ったよというお話ではなく、それを作る過程のお話。
どんな 3DCAD を買って、使って作成をしようかということについて。



私は 3DCG の方から歩み寄った人間だったので、これまで 3Dプリント用のモデルは 3DCG 用のポリゴンモデラーを使ってきた。このブログの記事でもたびたび modo の画面写真が貼られていたと思う。
使い慣れたモデラーならどんな形でも割と短時間でざくざく作れるのだけれども、ポリゴンのサーフェイスモデラーとソリッドモデル必須の 3Dプリントでは若干の相性の悪さがある。
たとえば、形状は完全にポリゴンで囲われたものでなくてはならない。どこかに板一枚の穴があったりしたらモデルは厚みを持たないことになってしまい出力には不向きとなる。また、メッシュが全て結合していなければならないので、どこか辺が繋がっていない部分があるとこれまた薄皮だけで出力できないモデルと判別されてしまう。

そういったお約束を頭に入れて設計すれば良いだけの話なのだが、もう一点ポリゴンモデラーはブーリアン演算による形状の加工を苦手とするという問題がある。複雑なメッシュ同士のブーリアン演算では完全にできなかったり、そもそも失敗して実行できなかったりする。
私は立体出力用の形状を作成するのにブーリアンを多用するのである。
今回はこの点が我慢ならなくて、ブーリアンの得意な NURBS系の 3DCAD を探すことにした。
3DCAD ならばブーリアン演算でざくざく形状を作っていけるし、厚みのある物体を作りやすい。

3DCAD といっても AUTOCAD/VectorWorks/SolidWorks といった第一線のプロが使うようなツールは 30万円~100万円 とかいう価格帯で、本職ならともかくホビーで使うには重すぎる。
3DCG モデリングとしてもよく使われる Rhinoceros は 14万円くらい。まあ、これくらいなら買えるかもしれないし、それなりな人は使っているので「いつかは Rhinoceros」というあこがれラインに設定しておくことにする。
ということでレンジは 10万円以下で個人的に馴染むツール、という条件で探し始めた。
このへんだと 図脳RAPID 3D や TurboCAD なども視界に入り始めるが、やっぱりおいしい機能は上位版にしかなかったりして今ひとつである。特に STL 出力が上位版のみというのは立体出力用途としては残念なところ。

Google でおなじみの SketchUP の Pro版が 7万円台とこれらのツール系では割と安め。
なんで Pro版でないと駄目かというとファイルの入出力形式とブーリアンが使えるといったあたり。しかし、SketchUp は作業フローが個人的に好みではないので今回は対象外。

このへんで私の望んでいるものというか、好みを書いておくと、

  • ブーリアン演算でざくざく加算減算しながら進めていける
  • サイズや位置などすべて数値入力で調整できる
  • ポリゴンモデラーとデータの相互交換ができる、STL出力は必須
  • 三面図ビューとレイヤーがある
  • あとは操作系で納得できたらよし

といったところ。

さて、3DプリンターやCNCフライスを使っている人たちの間で割と使われている NURBS モデラーに ”MOI3D” というのがある。お値段も US $295 と安め。
3DCAD というよりモデラーに近い?
これまでポリゴンモデラーでやってこれていたので NURBS系じゃなくてもーと避けていたのだけれども、ちょっと本気で体験版を使ってみることにした。


ざっくりとしたインタフェースで大丈夫だろうかと思っていたのだけれども、その代わり特にマニュアルを読まなくでもさくさく使いはじめることができるお気楽さがあって良かった。
フリーハンドでデザインしていくには良いけど、サイズを測りながらかっきり組み立てていくにはちと不向き。押し出し寸法とか、円プリミティブの直径とか要所要所では数値入力ができるので一応設計していくことができたけれども、移動の際に数値指定する方法がわからなかった。
レイヤーはグループに名前を付けてそれを表示/非表示といった簡易仕様。
手軽さとざくざく作れる感はかなり良いのだけれども、厳密に詰めようとするとちょっと物足りなそう。

さて、さらに 3DCAD を求めて徘徊していると punch!CAD の “ViaCAD” という個人向け CAD がお安いという情報を入手した。Win/Mac 版があって、Mac版は AppStore で購入できるらしい。
“ViaCAD 2D/3D” が US $99.99、”ViaCAD Pro” が US $249.99 と確かにかなりお安い。しかも機能表を見る限り “ViaCAD 2D/3D” でも十分そうな高機能ぶりで評判も悪くない。
残念ながら体験版が存在しなかったので、幾らか逡巡したあとにエイヤっと “ViaCAD Pro” を購入してみる。購入時点で実は Pro が Ver.7 で “ViaCAD 2D/3D” は Ver.8 とバージョンが一つずれている問題がある。使える機能でどっちにも有利なところがあって、悩んで Pro の方にしてみたが、通常は “ViaCAD 2D/3D” でおつりが来るほど使えると思う。


”MOI3D” は CGツールと CAD の中間みたいなインタフェースだったので特に理解しなくても使えたけれども、 ”ViaCAD” は純粋なる CAD なので CAD系インタフェースなのでちょいと慣れるに時間がかかった。
最初はチュートリアルのビデオを見まくってつかむしかない所。


はんだのリール部分は現物をノギスで計りながら数値入力でかっきりと作成。
組み合わせるモノができていないと、設計ができない。


パスの押し出し、移動、ブーリアンがわかってしまえば後は設計するだけ。
えいやっと作成。
操作系は慣れる必要があるとして、機能は十分でかなり良い感じ。今回のはんだ台では Pro の機能(主にサーフェイス系に多い)は使わなかったので、通常の立体出力用の設計には $99.99 の “ViaCAD 2D/3D” で十分かと。

余談だけれども、MOI3D も ViaCAD も 3Dconnexion 社の 3Dマウス(ひねり6軸のあいつ)に対応していてびっくり。作っている最中にくるくる回してみるのが容易になる。

そんな経緯を経て、個人的に納得できる 3DCAD “ViaCAD” に出会えた。まだ慣れが必要だけれども、大体希望を満たせそうな感じ。
”MOI3D” は次点。精密さよりもザクザク感が欲しいときは MOI3D も併用するとかが良いのかもしれない。まだ体験版で悩んでいるれども、体験版の期限(30日)が切れるまで使ってみて判断しよう。


はんだ台の最終版データについては Thingiverse にアップロード(http://www.thingiverse.com/thing:25993)しておいたんでそちらからダウンロードしてくださいな。

7 Comments to “はんだリール台と 3DCAD”

  1. BEGinnerCAD Says:

    検索でたどりつきました。
    ViaCadよさそうですね。
    まずはPro版を避けようと思うのですが、Pro版との違いがわかるサイトってありますでしょうか? オフィシャルページでは文章のみ見当たるのですが。。

    本当はSolidWorksがほしいが高すぎる。Rhinoはサーフェス中心らしいのでややこしそう。(ちょっと違うかもしれないけど、以前Shadeで挫折しました。)

  2. moon Says:

    3Dプリンターで検索して、ここにたどり着きました。

    最近、中国のネットショップ、タオバオで3Dプリンターを購入したんですが、上手く行きません。最初に平面の設定しましたが、作動させると平板の手前がフィラメントが浮いてしまいます。何度平面設定しても同じですねえ-。

    基盤は使っている部品は、Replicator 双頭と同じらしいですが、ファームウエアーは6.2。
    最新の7に入れ替えたくても、電脳とUSB接続を認識しないし、、。いろいろ問題ありです。

  3. rerofumi Says:

    ViaCAD PRO は先日 8 がリリースされて 2D/3D 版に劣る部分はなくなりました。性能比較表はサイトにありますよ
    http://www.punchcad.com/c-30-compare-viacad.aspx
    レンダラー以外ではサーフェイスモードがあるのと、ビューポートが自在だというあたりですかね。
    今は体験版があるので、それを試してからでも良いと思います。

  4. rerofumi Says:

    樹脂が PLA か ABS か、テーブルがアルミかアクリルかでアドバイスが異なるので、明確な原因までは見えないところですね。
    手前の部分だけ剥がれやすいというあたりから食いつきが悪い状況なのでしょうかね。アルコールで良く磨いて表面の油脂を飛ばしたり、紙やすりで軽く細かい傷をつけて食いつきのきっかけを作るなどといった汎用対策が考えられます。

    アルミのホットテーブルだったら、カプトンテープや3Mの養生テープなどを貼る等色々な方法があります。

  5. BEGinnerCAD Says:

    ありがとうございます。デモ版インストールしてみました。

    比較表見ると、Advanced 3D Modeling にいくつかPro版限定があるようで、この項目の明細を知りたかったのですが、デモでいろいろいじってみます。

  6. BEGinnerCAD Says:

    One rail sweep solid はPro版限定でしょうか?
     (123D design と比べても、webチュートリアルなどの充実もあり、こちらのほうが使いやすそうですね。本当は、Rhino目指しているのですが。)

  7. rerofumi Says:

    すいません、返答に間が空きました。

    >One rail sweep solid はPro版限定でしょうか?

    正直なところ私は上位版の Shark LT に移行してしまったので確認するのが難儀です。
    ViaVCAD の造形コマンドで Pro版限定なのはサーフェイス系と複数パスを繋ぐ系のやつなので、rail sweep は普通にあった様な記憶があります。あまり覚えていませんが。
    ViaCAD Pro には確かにありますね 2D/3D の方は手元で確認できないのでなんとも言えません。

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