コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

hatena bookmark

Makerbot のオープンファクトリー 3Dプリンタの “Replicator” が発売となった。
発売となったのはちょっと前の事なのだけれども、沢山のバックオーダーを抱えた Makerbot ががんばって製造して私の注文分がついに届けられたといった方が良い。
これまで Makerbot CupcakeCNC という3Dプリンターキットの初期製品で苦労楽しませて貰ってきたが、それの最新型ということで何が変わったのかというと以下の通り。

  • 完成品になった、キットでは無い
  • 作業サイズが大きくなった 220x150x150mm くらい
  • 最新の射出機 Steptruder MK8 が標準搭載
  • LCDモニタと操作ボタンが付いて本体だけで簡単な操作が可能になった
  • 射出機2個のモデルが用意された

私が飛びついたのは一番最後、デュアルエクストリューダーになって2色同時成形ができるようになったというのが待望の機能だったため。これについては後述。

というわけでこの記事は届いたよと自慢するだけのエントリー。



完成品ということで、組み上がった状態で届きます。そのため箱はちょっと大きめ。
電源は PC の ATXユニットではなく、外付けのごついACアダプタ(200W強)になりました。XBox360 のアダプタみたい。


完成品なのでセットアップも問題なく進行……、しなかった。
ゼロ点出しのホームポジション検出器が付いていて、起動時のセットアップ中にホームポジションへ行こうとしたところでがつがつステッピングモーターが脱調しまくる現象が発生。どうも写真の部分で射出機と奥のモーターがぶつかってゼロ点まで戻らない模様。
なんでそうなっているのか良くわからないのでY軸方向のゼロ点スイッチがぶつかるところに、切った消しゴムをテープ止めしてちょっと浮かせることにした。これで回避。


材料のフィラメントは CupkakeCNC 初代の頃は 3mm だったのだけれども、最近は 1.8mm のものを使う。なんかスパゲティみたい。
射出ノズルも 5mm から 4mm になっているし、全体的に細かくなっている。
完成品と言うこともあり、なんなく射出できるようになった。すばらしい。
CupcakeCNC の時はここにたどり着くまでに 3日3晩だったかそれ以上だったかを費やした覚えがある。まあ、その後成形できるまで1ヶ月くらい格闘していたのだけれども。
そういったみんなの苦労が積み重なってこの Replicator くんがあるんだね。しみじみ。


添付のSDカードにキャリブレーションデータやサンプルが入っているのでまずはそれを出力。
この写真にあるサンプルは細い線があるだけなのだけれども、テーブルの高さや水平度が正しく合わさっていないとこのようにテーブルに張り付かせることができない。
ノズルとの間が空きすぎていると張り付いてくれないし、間が詰まりすぎていると隣のノズルがひっかかって剥がしてしまう。
このデータを出力しながらテーブル調整をするのが良い。

今回 Makerbot Replicator に超反応で飛びついたのは Dual Extruder が理由なのだが、Replicator が発表されるちょっと前に Makerbot の素材コーナーで「PVAフィラメント」が扱われるようになったというのがこれまた重要な要素である。


PVA ポリビニルアルコールは水に溶ける物質で、予め水に溶かしたものが洗濯糊だとか紙用の糊だとかで日用品として売っている。
なので、PVA フィラメントと 3Dプリンターで出力したものは水につけておくと溶けてなくなってしまう
つまりサポート材として使えるわけなのだ。


2色刷出力品。これだけでもおおっと思える感じ。
右は黒い部分も白い部分も ABS の普通の二色成型品。左は白い部分を PVA に変えて出力したもの。
髭がにょろにょろでているのは、PVA の粘度が低く射出機が停止してもまだ漏れ続けるためこんなゴミが混ざってしまう。逆に射出開始してもすぐ出てこないなどかなり扱いにくい。
ABS の温度設定が 220度なのに対し PVA は 190度にする必要があるとか色々扱いに差違があるし、扱いにくさに対する技術フォローも必要になる。
しかし、CupcakeCNC で馴らした俺たち、そんな苦労はへっちゃらだぜ!


で、このキューブを水につけると白い部分が溶けていく。
大体半日もすれば全部溶けた。


全部溶けて流れたのがこちら。
実は中に球を作り込んでいた。この球が宙に浮いた形でも綺麗に出力できているのは白い部分がサポートとして機能していたため。


以前 CupcakeCNC でサポートの説明をするためにドールヘッドをサンプルとして提示した。
それとおなじことを PVA を使った二色成型でおこなうとこのような感じになる。
あごの下に PVA のサポート土台を成型し、宙に浮いた部分が床に落ちること無く出力できるようにする。


出力後は水につけて PVA 部分を溶かすだけ。
なかなか理想的な出力結果が得られた。

ここまで駆け足だったが Replicator の紹介と、二色刷りの試験、および PVA を使ったサポート出力の実験までとなる。
実際には出力品のサイズを測ってマシンのキャリブレーションをとるなど CNC っぽいこともやっているのだけれども、それはまた別の機会に。

完成品になり多少物足りなくなったところもあるけれども、全体的な完成度は上がっているしすばらしいプロダクトになっていると思う。
かといってこれまでの様な苦労や経験が要らなくなったかというとそうでもないあたりが若干面倒ではある。
二色刷りによってサポート材ありの出力ができるようになったのは最大の注目点であろう。
これができることで可能性がぐんと広がるのだ。
従来機種よりも値上がりしちゃったけれども、それでも $1,999 はお安いと感じるくらいの一品だと思うよ。

Leave a Reply