コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

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電子工作の試作や実験で使う電源のお話。
レギュレータで 5.0V と 3.3V を供給するBOXがあると便利かなと思って作ってみた。ついでなのでデジタル電流計もセットにしてある、どちらかというとこのデジタル電流計をつくってみたかったというのが一番の動機かも。

電子工作のさいに用いる電源としてメジャーなところとしては黒い色をした四角いACDCアダプタなのではないだろうか。特に秋月の小型スイッチング電源は多くの人が使っているんじゃないかと適当に推測する。
ACDCアダプタも良いのだけれども、あのジャックを毎回制作物につけるのが面倒だとか、5V以外の電圧を扱うようになったときとっかえひっかえが案外面倒だとかあるのです。特に取り違えは深刻で、うっかり12Vを食らわせてマイコンやLCDモジュールを破損させてしまったりするんですよ。これが。


あるとき「直流安定化電源が欲しー」という発作に見舞われ、そのときにアルインコの無線機用電源を電子工作用に購入した。安くてそこそこの直流が得られるし、実験で電流が欲しいときにも 10A まで出力してくれる。

この電源装置から4ピンコネクタに電源を引いてきて使っていた。なので私が作る実験基板はいつも4ピンコネクタが電源となっていたのはそのせい。

この形だとブレッドボードにもそのままさせるから案外便利なんだよ。

電源装置の方で 1~15V まで電圧可変できるので、必要に応じて調整していたがそのたびにテスターで計りながら合わせていた。それと接続ピンは写真の通りむき出しなのですぐ折れるのも問題であった。
3.3V と 5.0V の間を行き来することが多くなってきて、そのたびにテスターで見ながら合わせるのがだんだんと面倒になってきた次第。

そこで、5.0V と 3.3V の両方を出力する電源ステーションを作成することにした。
といっても面倒なことはなく、単に 5.0V と 3.3V 2つのレギュレータで電圧をそろえてジャックから出力するだけ。
それだけだと面白くないので、マイコンを使ったデジタル電流計をつけてみた。
電子工作中にプロダクトがどれくらいの電流を消費するかぱっとわかるようになるはず。



回路図。
電源部分は本当に単純なレギュレータ回路。

マイコンで電流を計測するために直列で 0.1Ω のセメント抵抗を挿入している。
電流をマイコンで計測する方法を調べてみたけれども、なんかあたりまえの事として扱われているのかあまり詳しい説明が見つけられなかった。
抵抗器に電流が流れるとき、その電流の大きさに比例して電圧の降下が起こる。抵抗器の両端にテスターを当てて電圧を測ると電流の大きさに比例した「電圧差」が計測できる。
0.1Ω の抵抗器に 1A の電流が流れているとき、で移行期の両端で現れる電圧差はオームの法則 V=IR にのっとって 1 * 0.1 = 0.1V と出てくる。5V を供給し 1A の電流が流れる時、電流計測用の 0.1Ω だけで 0.1V 消費しちゃうので、ちと減って 4.9V がターゲットに流れることになる。のかな。
まあ、電子工作での通常は 10mA ~ 50mA くらいがせいぜいなので気にするほどの数値にはならなそうだ。
なので、0.1Ω 抵抗器の両端をそれぞれ ADC で計測して差を求めると一応電流が計れるというわけ。

しかし、その差があまりにも小さいのも事実なのでマイコンの ADC 分解能を駆使しても微少な差が見えるかどうかはわからない。
そこでアナログ演算器であるオペアンプを使って、2点間の相対電圧差を求めつつ、それをゲインかけて増幅するというのが一般的な計測法らしい。
このとき使われるのが「差動アンプ」と呼ばれる回路。PSoC だと INSAMP というモジュールでアナログ部分にいるので、ゲインアンプと組み合わせて適当計測しやすい電圧まで増幅しながら ADコンバータに流し込む。そのへんが全部 PSoC の内部で作れちゃうので楽ちん。

INSAMP でゲインをかけつつ差が出てくるというのは便利なんだけれども、内部回路で 5V を超えてサチってしまうと正常な値にならないわけで。
最初設計した時は、計測用の抵抗器を +5.0V 側に差し込んで、それを抵抗分圧で半分にしたものを INSAMP に与えていた。分圧しないと 5V 近傍なので計測ができないというのは頭にあったけれども、INSAMP 内でサチってしまうのでゲインが使えなくなるというのはちょいとはまったところ。
1回実際につくってみて、ああでもないこうでもないといじくりまくってようやく色々な事をを理解し作り直したのが上の回路図。ここに来るまでに一回試作して捨てているところがミソ。
こちらの「自作電子小物/実験用DC電源 V0.4」の記事を参考にさせてもらってます。これより幾分おおざっぱだけれども。


PSoC のアナログモジュール構成はこんな感じ。
INSAMP で差分を出しつつ x4.0 ゲインで増幅、それを PGA で x16.0 に増幅した後 14bit ADC で計測。
理論上は 781mA まで計測できるのだけれども、無負荷時に 0 になっていないとかあれこれでまあ 700mA ちょいあたりが上限。無負荷時がばたついているので 0~5mA くらいをふらふらしてゼロにはならないのだけれども、そのへんは簡易表示ということで割り切り。


基盤設計。

今回はLED表示もあるのでアクリルのカバーも作ってみた。


実装。

電源ジャックは右の USB 端子から真ん中が 5.0V、左が 3.3V。
USB端子は、充電用コネクタとしても使えるので USB充電をするものを接続して充電中の電流が見れたりする。
ただし、レギュレータに放熱版をつけていない等の不備があるので実際の充電には使わない方が無難。


タクトスイッチで 5.0V ラインの電流表示と、3.3V ラインの電流表示を切り替え可能。
メイン電源投入時、無負荷状態にしてタクトスイッチを押したままの起動だとゼロオフセット計測&記録モードになる。単純に現在の値の平均を無負荷時としてオフセット値に設定するだけ。

精度的には荒いけれども、そこまで厳密な計測器を狙っておらず簡単な消費電流の指標が表示されれば良いと思っているので今回はこんなところで簡単に済ます。

いつもの回路図、K2CADファイル、ガーバーファイル、PSoCプロジェクトの詰め合わせ。
Download: powstation_20120624a.zip

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