フィギュアを作ってみようか – 素材編

時代は色々と便利なモノを作り出している。それはモデル界においても同様で、新しい便利な素材の出現によってこれまでの作業が激変していたりする。
でまあ、今どきの造形を知るために色々な調査を元に実際に試してみた感触をつらつらと書き連ね。
私視点なので色々間違いがあるかもしれんけど、そのときはごめんなちゃい。

■なぜパテなのか
20年くらい前、フィギュア造形というと紙粘土がまだメジャーだったような覚えがある。そこに値段は高いけど良い素材「フォルモ」と「ファンド」が入ってきた。
これらが紙粘土に比べて優秀だったのは「肉ひけが紙粘土に比べ少ない(乾いたときに水分の蒸発で造形時より小さくなる事)」「盛りつけがしやすい(乾いた部分にさらに粘土を足してくっつけること)」がやりやすい事。
でもまあ、肉ひけはかなりあるし食いつきも余り良くない、なにより粘土なんで乾燥に数日かかるという問題は仕方ない物として残ってはいた。
このあたりの評価ポイントは今も変わらないと思って欲しい。
粘土の方は「スカルピー」の登場で割とステージが変わったけれども、それよりもポリパテの方がセンセーショナルだった。まあ、具体的に言えば「モリモリ」だけれども。
パテは食いつきが良く、盛り上げができるという強力さがあったけれども、大量に使えないとかやっぱり乾燥固定に時間がかかるとかあった。なので補修、改良用に使うことはあっても造形素材としてはディテールに使うだけであった。
けれども「モリモリ」の登場で、割と大きな物もこれでごりごりと造れる様になる。
そのへんが「モリモリ」のパッケージに「パテ革命」と書かれている所以である。最も、10年以上も前の革命なんでどれくらい威光があるかは知らんけど。

■エポキシパテ
大量に使いたいということで「ミリプット」を使用。
エポキシパテは他のパテと違って粘土に近く、大体の形が造りやすいのが特徴。粘土造形
の感覚で形を捏ね、おおよそで造ってから削って整える作業ルーチンになる。
乾燥は数時間で開始するが、結局1日ほって完全乾燥しないとまともに削れない。よって、前の日に大方の形を作って仕込んでおき、翌日削って造形作業する感じになる。
「ミリプット」がよろしくないらしいのだが、結局使いづらい。
粘土感覚なのは良いが、のびが悪いので上手いこと形が作れない。えらい不格好でも良いから大きく大雑把なものを作って削り込むことになる。のびが悪いので細かく食いつかせる事が難しい。
「ミリプット」の削り心地は悪くない、ただちょっと堅めなのでごりごり削る事になる。ヤスリだとあっという間に目を埋めてしまうので、ナイフがメインに。

■ポリパテ
本命、というか作業の中心。
「モリモリ」
硬化剤を入れて 30〜1時間で固まりはじめ、3時間もすると完全硬化する。1時間くらいのところでナイフの刃を入れると、消しゴムを切る感覚で削げるので柔らかい内に余分な部分を削り落とし形状を整え、硬化したらヤスリやナイフでさらに削り整えていくといった作業スタイルになる。
この削り心地と作業サイクルの短さが秀逸で実に使いやすい。
ヤスリやルーターで削ったときも、ほどよい粒度でくだけてくれるので目詰まりを起こしにくい感じ。
パテ状なので厚みを持った物を一回で作ることは出来なくて、板を作ったり、固まりに盛りつけて徐々に大きく形を作っていく感じになる。
「スベスベ」
モリモリの姉妹品。白くてきめ細かいポリパテなので表面仕上げ向け。
練って盛るときの使用感はモリモリとほとんど同じだけれども、こっちは色が白いので硬化剤が透明である。硬化剤が適量だったのか、今どれくらい混ざっているかがわかりにくい。
ただ、モリモリと違って非常に固い、かなり固い。ナイフで削ろうとするとものすごく苦労する。ヤスリ作業がメインになるので使う場所を考えて吉。
モリモリでおおまかな所を作って、表面と細部をスベスベで整えていく感じだろうか。

■アルテコ
アルテコは会社名、そこの出している瞬間接着剤系パテ。
気泡埋めとかに瞬間接着剤を用いることが良くあるんだけれども、瞬間接着剤はなにせ固いのであとで削るときに苦労する。そこで、粉をまぜて削りやすくしたのが瞬間接着パテ。
混ぜてから(正確には容器より出してから) 5分ほどで完全硬化するので接着したい部分に使ったり、ちょいと急ぎの修繕に使う。粉を混ぜてあるので瞬間接着剤より盛り上げできるけれども、基本あまり大量に使ったり厚く盛ったりという風情ではない。
フィギュアよりも、プラモの補修改良に最適って感じだなあ。

■光硬化パテ
タミヤが出してきた、この中では最も新しい素材。塗った後、光(紫外線)を照射することで硬化するパテ。
直射日光で 1分、蛍光灯(5cm)で 2分という硬化速度。
一瞬意味が分からなかったけれども、これって要するに硬化剤との混ぜ合わせが要らない即硬性のパテなんだな。
チューブに入っているときは軟膏やクリームほどの粘度。固まるとポリとエポキシの中間くらいの堅さ。ナイフで削れる。食いつきも良い。
厚くすると光が届かなくて硬化しないのと、そもそもの粘度で厚塗りできないという素材。厚さ 2mm くらいが普通に使える推奨範囲らしいよ。
でも、その特性をふまえた上で、気泡埋めや傷埋め、ちょっとだけ肉足ししたい時に使う。細部の補修用といっても良いかも。
作業サイクルが短いので、ちょっと盛って補修、ちょっと盛って補修の流れになる。
使い方が分かってきたところでじわりと人気が出てきている素材。

■プラスチック粘土
パテじゃないけれども今回使ってメチャクチャ便利だったアイテム。
お湯に入れると粘土状に柔らかくなって、冷めると硬化するプラスチック。一度硬化した後もまたお湯に入れると柔らかくなるので何度でも使える。
以前から「自由樹脂(Free Plastic)」として売られており、小麦粉粘土に代わる安全な造形素材として一般的なホビーとして用いられていたもの。これにモデラーが目を付けた理由は、柔らかい内にモデルを押しつけると「型どり」に使えるということに気づいたため。
フィギュア用には「型想い」という商品が売られている。以下は「型想い」の感想。
硬化時はプラスチック消しゴムと同程度の弾性を持っている、これをお湯に浸けると水飴状になる。熱いけれども、その水飴を練って形にしていく。水に浸けるなりして冷やすと硬化。硬化後は切ることはできるけれども困難、基本切り削りはできない。
硬化した素材に、軟化した素材を盛り足しても食いつきが悪く分離させることができる。この特性を利用して離剥剤要らずの型抜き複製ができるというわけ。まあ、ゴム状で剥がすときにちょっと伸びちゃったりするので厳密な複製はできないけれども、おおまかな感じで良ければ数分で型ができるので便利この上ない。
「自由樹脂」の方を使って心材というか、おおかたの形状を作成するというのも良いかもしれない。

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