コメを噛め

コメを噛め

rerofumi の電子工作メモ

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Gynostemma の不具合を修正した Ver.1.40.0(20110807版)をリリースした。
これまで時たま線が消えるとかいう不具合があって自分で使ってても気がついていたのだけれども「運用で回避(基板CADでパターンを変えて出にくくする)」していた問題をちょっとまじめに修正。まだ完全じゃ無いあたりが残念だけれどもこれでまた使っていこうと思う。
過去の記事を見返すとGynostemmaの元となる基礎研究を8月に始めているのでちょうど一年。CNCフライスを購入したのは昨年7月なのでそっからみてもだいたい一年。先日の記事にあるように0.5mmピッチのプリント基板を作るのが目的だったのでこの一年の積み重ねでようやく到達することができた次第。ゴールじゃないよ、ようやくスタート地点に立ったのだよ。
CNCフライスだけじゃなくて3Dプリンターも全部つながっているので色々と振り返ってみる記事。

3年くらい前にお邪魔したとある研究室で電子回路の試作にCNCフライスを使っているとお聞きした。なんでもエッチングより早いよーとのこと。
CNCフライスと言えば金属削ったりケミカルブロック削って彫刻作ったりするものみたいな知識は持っていたけれども、銅箔板を削って試作基板を作ることができるんだと認識したのはそれが最初。
そうかすごいねCNCフライスと思ったもののそんなにお安いものではない。
その日から度々「自作CNCフライス」の記事を読んで自作できないかなと思いを馳せる。
まあ何となく自作できそうな気がしないでも無いのだけれども、自分には圧倒的に機械工作のスキルが無くて完成には至れなそうな気がするわけだ。それにたぶん自作したとしたら精度が出せない。動くものは作れたとしてもプリント基板が作りたいという目的には適用できないものであろう。

三軸CNCを調べているとちょこちょこと3Dプリンターがヒットしてくる。構造が同じで、削るか積み上げるかの違いしかないものだからだ。
ちょうどRepRapが形になりはじめたころで、それまでの数千万円オーダーの機械ではなくホビー用として家庭に入りそうというそんな夢が現実になりつつある時期でもあった。
しかしそれらを調べていくと一つ突き当たる問題がある。CNC制御をするソフトウェアである。自作で3軸CNCを作ったとしてそれをコントロールするCNC制御ソフトウェアはどうするのか。ハードウェアが不確定なときはソフトウェアは堅実なものを使うべきである、その逆もしかり。両方を同時に自作するというのは現実的では無い。
RepRapはハード、ソフトともにオープンプロジェクトとすることでその問題を均しにきた。そしてその派生物として登場してきた CupcakeCNC もまたしかり。ソフトウェアが整っているというのが最大の魅力である。
とにかくCNCや機械工作のスキルが自分にはないのでまずはこれに慣れることから始めようと思い3Dプリンターのキットを入手することを決意した。キットを組み立てメンテナンスすることで勘所がつかめるようになるだろうという計画である。

さて、なんらかのCNC制御工作機械を使って工作をするとき必要なものは何か。CADでデータを作れるデザイン力だと思う。
3Dプリンターで造形をするには、その元となる形状データを3DCADなり3Dモデラーなりで作成できる必要がある。まあ、当たり前と言えば当たり前の話。
なので、これまで何度かチャレンジして失敗してきた3DCGモデリングに再チャレンジし、それを習得することにした。

なんとはなしに作っている様にみえるこれらオリジナル3Dフィギュアはすべて3Dプリンターに必要なスキルの習得訓練である。
まあ、そのうち3DプリンターやCNCフライスも使ってフィギュア作成をやってみたいねって野望もあるけど、それはいずれ。

こうして3Dモデリングソフトで意のままに形状を作ることができるようになったので3Dプリンターを迎え入れる準備が整った。高価な3Dプリンターを使った立体出力サービスなども利用して3Dプリンターと形状出力の実際についても実物でイメージすることができるようになった。
さあ次は3Dプリンターだ、とCupcakeCNCを注文したのが2010年3月でものが届いたのが2010年5月のこと。


CupcakeCNCはフルキットなので組み立てからメンテナンスや操作まですべて自分の手で触れて行われる。今はずいぶんとこなれてきたけれども、当時は本当にやんちゃで動作させるのにもの凄い苦労をするものだった。動かなくなったら2~3週間メンテナンスし続けるとか普通だったもの。なのでユーザーが安定して動くように改造したりするのは当たり前の代物だった。そしてそれもまた楽しい要素なのである。
CNC制御機器の理解を深めるためにCupcakeCNCから始めようという意図は本当に正解だったと思う。
使うには、メンテナンスするには、問題点は、精度を出すには、ソフトウェアは、制御コードは、本当にたくさんのことを学ばせてもらった。
そしてプリント基板を作成するにはどれくらいの精度があれば良いのかという勘所が見えてきたところでCNCフライスの導入を検討し始める。
3DプリンターとCNCフライスはまったく異なる加工機である。CNCフライスを購入したところで3Dプリンターを使わなくなるということはない。むしろそれぞれ得意な加工を使い分けることで工作の幅が大きく広がるだろう。


CupcakeCNCで存分に知識を得てCNCフライスにも手をのばす、ということでオリジナルマインドのmini-CNCキット BlackII1510 を購入する。
2010年7月には購入していたけど、そのときはCupcakeCNCに夢中だったのでそっちがメインでBlackII1510のほうは少しずつ少しずつでアクリルを削ったり、立体を切削して精度をみたりといった遊びを繰り返していた次第。
そんなとき、CupcakeCNCの改良パーツとして「ほんのりさん」の基板を作成。プリント基板作成とプリント基板CADの操作を久しぶりに行ったのでこのときのガーバーデータを元にCNCでプリント基板作成という最大の目的にむかってテストを始めるのである。

だが、プリント基板の作成はすぐに行きづまった。ガーバーデータをCNC切削用にGCODE変換する良いツールがなかったのである。特にK2CADが出力するガーバーを入力できるものが存在しなかった。べつにK2CADが悪いわけではなく、他のツールがEagleしか想定していなさすぎるとかそんな感じで。

これは cam.py をちょこっと改造してガーバーを読み込めるようにして作成したもの。バリだらけでひどいものだけれども、初めてCNCフライスを使って掘れたパターンだったので当時はいたく興奮したものだった。
だけれども cam.py もすぐに行き詰まる。ドリルデータをどうしても読んでくれなかったのよ。それに cam.py では外形の切り出しがセットで扱えないのと、領域ベタが処理できず横線がいっぱい入ってしまうという問題もあった。パターンのガーバーとドリル穴、それに外形きりだし、この3つのセットを「同一座標」として扱ってGCODEを出力するツールが欲しかったのだけれども見つけることができなかった。
そこで、ガーバーをGCODEに変換するツールを自作することにした。研究を始めたのが2010年8月14日になっている。この後最初の基板を切り出せたのが2010年11月22日頃の模様。
その後は基板をたくさん作りつつスクリプトに改良を加えていった。ニコニコ動画にあげたCNCフライスの実演動画についたコメントからヒントをもらって改良した部分もある。パスを2重にして溝を広げるとか、ドゥエルをつけられるようにするとか。
自作スクリプトでGCODE変換をして作ったプリント基板を公開してきたものの、スクリプト自体は非公開だったのでそれを公開しさらにアプリケーションとして体を整えたものが Gynostemma でこれを公開したのが2011年5月。
まあ、結局自分で使うために作ったアプリなので、自分が一番良く使っているといった状況ではあるが。

Gynostemmaができたことと「美濃昌典」を使い始めたことでCNCフライスによるプリント基板作成がずいぶんと安定してきて精度を上げることができるようになってきた。
これまでは面実装部品といっても1.27mmのSOPがせいぜいで使ってきたけれども、「美濃昌典」入手の前後で0.8mmピッチに挑戦し以後少しずつ細かくしていき0.5mmピッチの作成に成功した。
とまあ、ここまでがプリント基板を作るためにCNCフライスを導入して作業をおおよそ確立するまでの歩みである。
まだまだこれから先に楽しい世界が待っているよ。

このように、CNC制御の工作機械に入れ込んでいるのは何故かという問いについては昨年のニコニコ技術部勉強会NT川崎にて既に語っている
目的は作成したものをネットワークで伝送することにある。
電子工作にしろなんにしろ工作物は展示会にきてもらってそのものを見てもらうか、量産して配布するしかしないと皆に手にとってもらえない。だがデータはネットで伝送ができる。形状データをダウンロードして、自動工作機械に作ってもらうことで「そのもの」が手に入るのだ。
そういった時代が来ることを期待しつつガーバーデータを記載し続けているが、「CNC制御の自動工作機械オモシロイよ」だけでも十分なのかもしれない。

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